街はイルミネーションが光り輝き、いつも以上に賑わう中、やたらと目に留まるのは幸せそうな家族連れと無駄にイチャつく恋人ども。


「クリスマスっつーのはキリストの降誕を祝うもんであって、テメェ等の祝い事じゃねぇっての」
「本当、どいつもこいつも浮かれてるネ」
「ちょっと、銀さんも神楽ちゃんも真面目に仕事して下さいよ」


久々の依頼なんだからと張り切る新八に対し、俺のやる気はゼロに等しい。
依頼は有り難いのだか、その内容はクリスマスケーキの路上販売。こんなクソ寒い日に外で立ち仕事ってだけで憂鬱なのに、加えてサンタクロースの格好までさせられる始末。


「何でいい年こいてコスプレしなきゃなんねぇんだよ…」
「銀ちゃん似合ってるアル。まっ、私のミニスカサンタの足元にも及ばないけどな」
「ガキのコスプレ姿なんざ興味ねーよ」
「だから、無駄口叩いてないで仕事しろって言ってんだろー!」


―――――――――


結局ほとんどのケーキを新八が売り上げ、報酬として現金と1人1箱ホールケーキを依頼主から貰った。
新八と神楽は大喜びでお妙のとこへ行く言い出し、俺は滅多に食えないホールケーキを1人で堪能しようと、その場で解散した。


「あ、銀ちゃん」
「おー、名前。なに、お前もコスプレ?」
「そう、クリスマスだから着ろって店長がうるさく言うもんだから…」


偶然出会したのは仕事帰りの名前で、神楽と同じミニスカートのサンタ衣装を身に纏っていた。
とは言え神楽とは全く違い、名前は見事なまでに着こなしている。女性特有の魅力やら厭らしさやらをふんだんに醸し出し、俺は必然的に見惚れてしまう。


「ん、なに?」
「あー、いや…コレ、お前にやるよ」


視線を感じたのか、不意にこちらを向いた名前と目が合い、不思議そうに口を開く。馬鹿正直に見惚れていたなど言えるわけなく、咄嗟に持っていたケーキの箱を彼女へと差し出した。


「え、貰っていいの?」
「おう、プレゼント。メリークリスマス」
「ふふ、ありがとう、銀時サンタさん」


名前もまた大の甘党で、よっぽど嬉しかったのか、受け取るなり溢れんばかりの笑顔を見せる。


「で、名前サンタは俺に何をくれんの?」
「え?えーと…」


俺の言葉に対し、立ち止まり本気で悩み出す名前。
暫く悩んだ末に思い付いたらしく、俺の肩に手を置いた彼女は背伸びをし、唇に軽く触れるだけのキスをくれた。そして続けざまに顔を耳元へと近付けて、小さな声で囁く。


「プレゼント…私の愛でもいいかな?」
「そりゃ喜んで、頂戴します」


言い終えた後の名前の顔は、寒いせいか、恥じらいのせいか、ほんのりと頬を染めていた。
そして俺等は周りの恋人達に便乗して、どちらからともなく手を繋いだ。


きみのこころは街角で

(このケーキ、一緒に食べよう?)
(俺、名前の体に盛ってから食いてぇんだけど…)
(さっきの言葉、撤回します)

Merry Christmas.20171225


BACK