一年、一通
かっちりと着込んだスーツに綺麗に盛り付けられた食事、窓から見える一面の夜景。記念日に相応しい、いつもと違うデート。イベントごとはちゃんと祝いたいからと数か月前から計画したデートは、無事彼女を喜ばすことができたらしい。満面の笑みで夜景を見つめる横顔に、ほっと胸を撫でおろす。
「ねえ、あのさ。ちょっと渡したいものがあるんだけど」
食事を食べ終わりデザートを待つ間、そう言って俺は用意していたあるものを取り出した。どうぞ、と渡したのは、一通の手紙。
お世辞にも字が綺麗とは言えない俺だが、伝えたいことをひとつも漏らさないようにと、手紙を綴った。
静かに受け取った彼女は、やけに驚いた顔をしている。どうかしたかと尋ねると、困ったように笑いながらバッグを開けた。中から、俺よりも数段綺麗な字で"航平へ"と書かれた封筒が。
まさか、と固まる俺に彼女は「同じことしてるね」とはにかんだ。お互い被るだなんて思っていなかったものだから、思わず顔を見合わせて笑い合う。
今日一日俺の想いを入れていた場所には、帰る時には彼女の想いが一通、収まっていた。