一年、一回
記念日には似つかわしくないいつもと同じ居酒屋で乾杯をする。ちゃんとしたデートは週末にする予定で記念日当日の今日は特に会う予定もなかったのだが、今日が記念日なんですよと先輩たちに話している間に会いたくなってしまった。
急にどうしたのと不思議がる彼女にそれを白状すると、嬉しそうに頬を染める彼女が可愛くて、ごまかすようにお酒に手を伸ばす。
彼女と出会った日のことなどまるで昨日のことのようなのに、もう付き合って一年にもなるらしい。
二人の距離ももう随分と変わったが、未だに変わらないことがある。タイミングがなくて付き合った当初のままなのだろうが、そろそろ良いのではないだろうか。
「一年経ったことだしさ、下の名前、呼んでくれないの?」
未だに俺のことを"乾くん"と呼び続けている彼女にそう提案すると、驚いた顔で数秒固まった後で、ぶわりと耳まで赤くした。お酒のせいだけでないことは明白だ。
真っ赤な顔のまま、おずおずと彼女が俺の名前を呼ぶ。緩む頬をそのままに、人差し指を立てて強請ってみる。
「ねえ、もう一回」