ボクラノカタチ
真夜中に、ふと目を覚ました。カーテンの隙間から漏れる月明かりもなく、そういえば新月だったことを思いだす。彼女の寝息が静寂を支配するこの部屋で、僕は起き上がることもせず、ただ天井を眺めていた。「僕が死んだら、君はどうするんだろうね」
ぼそりと呟いた言葉は、案外大きく響いてしまった。起きてしまっただろうかと隣を見るも、目は閉じられて、胸は規則正しく上下したまま。ほっと胸をなでおろし、もう一度眠ろうと目を瞑る。
「死ぬかな」
「っ、」
突然隣から聞こえて、はっと目を開け顔を横に向ける。けれども、彼女は先程と何ら変わりなく目を瞑っている。と、彼女が静かに息を吸い、うっすらと唇が開いた。
「……死ぬと思うよ」
黙っている僕に、もう一度静かに、しかしはっきりとそう口にした。まるで休日のお出かけについて行くとでも言うような軽さで、後を追うとそう言った。
僕には、彼女のそのセリフの中身と言い方が、ひどくちぐはぐに思えた。恋人が死ねば私も死ぬ。恋に溺れたか弱い憐れな女のようなセリフを吐きながら、一方その声色は凛と強かで、どこかアンバランスな美しさを纏っていた。
彼女が何を思ってそう言ったのか、僕には分からない。目を開けたまま考えあぐねていると、布団の中で彼女が僕の手を握った。
「私はね、貴方の分まで生きようなんて思えない」
「……」
「貴方は、二人分の命を背負って生きてるの。貴方が死んだら私も死ぬ」
だから貴方がいつ死んだって構わないよ?だなんて。
「僕が君を殺すような真似をすると思う?」
「さあ、どうでしょう」
「分かって言ってるでしょ」
なんのことだか、とでも言いたげに黙りこくった彼女は、きっと僕のことなど見透かしている。
彼女が一緒に死ぬと分かってなお死ねるほど、僕は強くない。自分自身は死にたがる癖に、愛する人には生きていて欲しいと願う。
彼女の言葉は、例え嘘だとしても、僕が死なない理由には十分だ。でもきっと、彼女は本気で死ぬんだろう。なぜだかそう思える。取り乱すことも無く、至極冷静に命を絶つ彼女の姿は想像にかたくない。さもそれが当然の選択かのように、彼女は自らの死を選ぶのだ。
僕らはきっと普通じゃない。愛する人の枷にあえてなりたい女など、その枷を愛おしむ男など、そう沢山いてはたまったものじゃない。
狂ってますか。そうですか。
おかしいですか。そうですか。
だけれどこれが僕らのカタチ。