一年、一問
『問題』お風呂上がり。濡れた髪をタオルで拭きながら部屋に戻ると、彼女からのメッセージ。唐突に送られてきたそれに、訳が分からず眉間にしわが寄る。
既読をつけて次のメッセージを待っていると、すぐに送られてきた一問のクイズ。
『今日は何の日でしょう』
ぎくりと時が止まった。これを聞かれるということは、俺が何かを忘れているということだ。細かい記念日を設定するような彼女ではないから、それなりに大事な日であることは間違いない。
バレンタインはもう過ぎたし、彼女の誕生日はまだ先。考えうるイベントを頭に浮かべて、やっとのことで思い至った。
「やべ、一年記念……」
ちょうど一年前、俺らの関係が恋人に変わった日。
いくら仕事に追われていたとはいえ、これはやってしまった。今日の仕事は早めに終わったから何か用意して会いに行く時間はあったのに、すっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
焦りを抑えきれないまま電話を掛けると、すぐに呼び出し音から切り替わり「もしもし」と彼女の声。もしもしと返した俺の声は自分でもわかるくらい上擦っていて、焦って掛けたのは丸分かりだろう。
「拓司さんどうせ忘れてたでしょ」
ケラケラと笑いながら言った彼女からは、怒っている様子は感じられない。そのことに安堵しながら、「ごめん」と素直に罪を認めた。
「問題、」 すっかりお見通しな彼女から、電話越しにもう一問。
「明日は拓司さんのお仕事がお休みですが、それに合わせて私は有休をとりました。さて、それはなぜでしょう」