一年、一杯

 いつもより少しだけかしこまったデートから帰り、家に着いた途端二人の口からは疲れたと零れた。
 あまり外に出ることが好きではない僕ら二人にとって冬というのは殊更外出が億劫になるもので、こうしてちゃんとしたデートに出かけるのも随分と久しぶりに感じる。
 記念日でもなければしばらくは出かけなかったもしれないから、この季節に記念日があるのはちょうどいいのかもしれない。
 代わりばんこにシャワーを浴びてリビングに戻ると、先に上がっていた彼女はお酒を開けていた。
「まだ寝ないの?もう今日は疲れたでしょ」
「一杯だけ。拓哉も付き合ってよ」
ほら、と言って自分の隣を叩く彼女が促す通りに腰を下ろし、用意してくれたお酒に口を付ける。特別な一日を過ごしたからか、いつも通りの晩酌は、どこか安心感すら与えてくれる。
 けれど、彼女となら記念日くらいは背伸びしてみてもいいと思える。精一杯の背伸びをして、背伸びしてるねと笑い合えるこの関係が好きだから。
 来年のこの日も、疲れたねと一杯交わしていよう。



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