かくれんぼ
(日視点)
会議の休憩もそろそろ終わる頃。少し離れた自販機まで飲み物を買った帰りに角を曲がり損ねて足を止める。一瞬目が合ってしまった気がして心臓が嫌な音を立て始めた。
「……」
盗み見は良くないとは知りつつ、意を決してそっと片目を角から覗かせた。ああ、やっぱり幻視ではなかった。
今回のホスト国である快活な青年が力なく座り込んだまま目尻に涙を溜めて目を閉じ、壁に両手を縫い付けられるようにして唇を貪られている。覆い被さる趣味仲間の彼の瞳は確実に獲物を喰らう獣で、どうやら彼は此方に気付いている。視線が少しだけ緩まり、ナイショ、と目で訴えてくる。
誰に内緒にすればいいのか即座に察してしまい、苦笑しながら頷いた。腕を上げて軽く腕時計を指で叩き、時間がそろそろですよと行動で示してみる。時間厳守を掲げる彼の元同盟国にどやされて不貞腐れる超大国の未来が何となく見えた気がしたのだ。彼は此方に気付いてないけれど。
なるべく足音を殺してその場を離れた。成程心の内側にはほんのりと温かな不思議な気持ち。言葉で言い表せないそれをどう処理するか首を傾げて愛しの人が待つ会議室へと足を運ぶ。
家へ帰ったら、何か彼らで一本作れそうだと少々腐った感想を八つ橋で包んで隠しながら。
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