我慢なんて出来そうにない(アーサー←キク、キク独白)
アーサーさんとキクへの3つの恋のお題:
キスしたい、キスしたい、キスしたい/我慢なんて出来そうにない/交わした約束
https://shindanmaker.com/125562 より
* * *
この刃を捧げたこと、どれだけ幸せだったでしょうか。
貴方へと向けた忠誠心。
貴方へと育った愛情。
歪に大きくなった執着心。
貴方を失ったことで、すべてが大きく変わりました。貴方がいて埋まっていた心の溝はまた深まり、誰にも踏み入れないほどの深さになってしまった。孤島に捨てられたかのような寂しさ、置いて行かれた恐怖。理解出来なかったのは幼さ故か、認めることが出来なかっただけか。
だから、だから貴方がまた私の目の前に現れた時、目を疑った。だって貴方は死んでしまったから。私の目の前で。真っ赤な華を散らせ、綺麗なまま、貴方は逝ってしまった。その光景を、何十年経とうとも忘れる事など出来ない。
知ったのはいつのことだったか。貴方は貴方でなかったから、私は全てを諦めた。あの男は貴方ではない。私の愛した、愛しい神ではないと、心に言い聞かせて。耳を塞ぎ、目を瞑り、何も解らないようにしないと、私の心は限界でした。
何度も、貴方が帰ってきたのではないかという錯覚に陥りました。知っているのに、分かっているのに、惨めにも私は貴方がまた笑ってくれるのではないかと夢を見ていたのです。立ったまま、起きたまま夢を見るなんてまるで子供のよう。嗤ってください、それほどに私は子供染みていたのだから。それほどまでに、貴方へと執着していたのだから。
貴方を取り戻したあの日、私は笑えていたでしょうか。
涙が溢れて、感情がどこかに行ってしまったかのような、そんな感覚。二度と失わないと、誓った声は震えていなかったでしょうか。貴方に触れた手は、貴方を傷つけなかったでしょうか。
ああ、神様。赦されるのならば、私の懺悔をお聞きください。
私は貴方を愛しています。友愛でも親愛でもない、肉欲を孕んだ醜い愛情です。貴方へと、私を刻み込んでしまいたい。二度と誰にも奪われることがないように、深く、深く。
けれど、それは赦されない。だって貴方は誰のものでもない。私だけが、貴方を奪うなど、神を地へと引き摺り下ろす行為だ。
けれど、私はそれを望んでしまっている。
だから手を、伸ばしてしまった。
押し倒した躰は、自分よりもずっと綺麗だった。
抜けるような白、蜂蜜のような金、宝石のような翠。そのどれもが美しくて、貴いものだと心が叫んでいたのです。それと同時に、触れてはいけないものに触れてしまったという恐怖が沸き上がった。考えてみてください。神様に、悪夢の穢れである私が、触れてしまったのですよ。
怖かった。貴方に拒絶されることが。
赦されたかった。貴方に触れることを。
愛したかった。ただのひとつの存在として。
愛されたかった。他でもない、貴方に。
貴方が私に触れてくれて、大丈夫だと囁いてくれて、どれだけ私は救われただろう。どれだけの穢れが、消えただろう。
あの時与えられた口づけは、私の心から棘を奪い去ってしまったようだった。口づけなんて初めてじゃないはずなのに、躰の内側に炎が灯されたような、温かくももどかしい悦楽。もう我慢なんて、出来そうになかった。それでも散らばった理性を掻き集め、耐えたことを褒めてほしい。だって、貴方を傷つけることは、望んでいないから。
ああ、神様。私の愛しい神様。私の言葉をお聞きください。
もう懺悔などとは言いません。貴方への気持ちは、もう偽りません。愛しさを、この気持ちを、貴方が受け入れてくれると言ったから。
貴方を守る盾に、貴方を守る牙に、私はなりましょう。貴方だけを守れるのならば、これ以上の悦びはない。貴方を傷つけるものは、すべて私が消して差し上げます。貴方の笑顔を見れるのならば、私はどんなことでもしましょう。
ああ、神様。ああ、私の愛しいひと。
アーサーさん、私は貴方を、何があっても失うものか。
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