突き落とした人、手に入れた血液(闇落ち)
ダークサイドに堕ちたギルベルトとイヴァンの話。
* * *
大きな柱時計が時刻を知らせる。古めかしいそれは僕のお気に入り。
その音を目を閉じて聴き、椅子から立ち上がった。
「さあ、ギルベルト君。おいで」
ご飯の時間だよ。
彼の肩を軽く叩いて促すと、血に飢えた目がぎらぎらと光っていた。
僕はこの目が好きだ。欲望をずっと堪えていた目。欲しいものを漸く手に入れた彼の心を僕の傍へと落とすのは、笑ってしまう程に容易くて。
別室へと連れて行く際、ナターリヤに人払いを命ずると不満そうな顔をしていた。まあ、新入りに僕が取られたってなると悔しいよね。ひとつ笑い、指を指す。
「ちゃんと出来たら、ご褒美をあげる」
その言葉で彼女は頬を染め、仕事を全うすると僕は知っている。何せ、僕の忠実な右腕だ。そうでなかったら傍になんて置いておかない。
「待たせたね、ギルベルト君。たっぷり、お食べ」
玉座に座って首を曝せば、息を呑む音。もう僕以外は見えていない。
彼は僕の膝に跨って首筋に牙を突き立てた。毎日やっていても人間の体ではやはり慣れない高揚感が襲い掛かってくる。ぢゅるぢゅると血が吸い出される音を聞きながら、思わず笑いが零れた。
「……?」
「ああ、気にしないで。何でもないよ」
笑ったのは、あんなにも僕を嫌っていたこの男が僕の血を悦んで吸っているからだ。そんな姿すら、愛しくて堪らない。
まるで人間が仔猫に餌を与える感覚。
「うふ、君はもう僕から逃げられないね」
その首に掛かった見えない首輪の紐は、僕の手の中に潜んでいるから、ね。
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