香る毒(闇落ち)



ダークサイドに堕ちたマシューとフランシスの話。

* * *

薔薇の香りに目が覚める。
自分は何をしていたのだろう。覚束ない思考回路の中で、過去の記憶を手繰ろうとすると頭に鈍い痛みが走った。

「おはよう、マチュー」

耳に吹き込まれる声。脳が痺れるような感覚。
ああそうだ。愛してもらってたんだ。深く、深いところまで。何も考えなくていい、ただ体を楽にしてと言われ、確かに僕はフランシスさんのものになったんだ。
彼に愛される、可愛らしいお人形として。

「おはようございます」
「よく寝れたかな?」

頷けば、優しく触れてくれた。
ああ、必要とされている。僕が僕であると。もうなにも必要ない。だって僕は、この場所で、僕であると証明されたのだから。
何かを忘れてしまったような気がするけれど、それだって些細な問題。フランシスさんは僕を必要としてくれているから。

「僕、幸せです」

とろとろと蕩けた思考の中、その言葉が口を突いた。

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