還る場所(闇落ち)



これの続きかもしれない。

* * *

一歩歩く度、香りが強くなっていく。導かれるように、ひとつ、またひとつ。とろりとした香りが、静かに道を告げる。
こっちだよ、帰っておいで、君の居場所はそこじゃないと。頭の奥で響く声が、僕を連れていってくれる。
何処へ? ……分からない。けれど、僕の居場所へ。
何十分歩いていたんだろう。時間の感覚もなくて、歩いた感覚も鈍くなって。芳香にくらくらとしながら、僕はただ歩いた。この先に答えがあると確信して。

「お帰り、マチュー」

闇の奥から声がした。
ああ、そうか。僕は何で忘れてしまっていたのだろう。ここは、彼は。
瞬間、薔薇の香りが周囲を包み込んだ。噎せ返りそうな程に強い、薔薇の香り。
思い出す中で、意識が遠退いていく。

「ぼ、く……は」

薄れていく視界の中で、紫色の光が僕を射抜いた。それが何だったのかは分からない。
けれどとても自由になれた、そんな気がした。

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