抱き寄せた君から酒の香り
知っていましたか。言ったことはないけれど、私はいつも貴方の背中を見ていたのですよ。
隣に立つことが少し気恥ずかしくて、だからと前を歩く勇気もなくて、気がつけば数歩後ろを歩いていました。私の好きなくすんだ金色が太陽に照り返って、優しい色をしているのは、貴方はご存知ですか。
でも、これは絶対に誰にも言わないのです。何故かと聞かれれば酷く幼稚な独占欲。奪われたくないのです、私だけのイギリスさん。貴方を、私だけのものにしたいのです。
ね、とてもくだらない。いい年をした爺が言う言葉ではありませんね。忘れてください。忘れない、ですか。酷いお人だ。
こんな感情を、貴方に知られたくなかったのに。お酒の力は怖いですね。こんなにもすらすらと言葉が溢れてくる。止まらないのです。湧き出でる泉のように、貴方への愛情が止まらない。どうしようもなく愛しくて、手を離せない。
怖いのかもしれないです。だって、いつか私が貴方の想う「日本」でなくなってしまったら、イギリスさん、貴方は私を捨ててしまうかもしれない。いえ、そんなことにはならないと信じたいのですよ。けれど、駄目なのです。ふふ、酔っぱらいは怖いですね。悲観的になってしまう。
ああ、済みません。では梅酒を頂けますか。ええ、氷は二つで。梅は実をいれてくださいな。ありがとうございます、美味しいです。
どうなされましたか、ああ、貴方も酔ってしまいましたか。お布団を用意しなければ。ちょっと失礼、あら、あら。イギリスさん、放してくださいな。お布団敷きますから。
「やだ」
やだじゃありませんよ、貴方、雑魚寝するつもりですか。だめですよ、お客様を畳の上で寝かせるなんて。
ほら、放して。
「……俺は、日本を離さない」
どっちのことですかねえ。私の手ですか、それとも今の状況ですか。
でも、どちらでもいいです。離さないでください、イギリスさん。私も、何があっても貴方を手離せませんから。
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