優しい毒で満たされて
隣で眠るあどけない顔を見るのが好きだった。普段は幼い顔つきに似合わない鋭い眼光で周囲を牽制するのに、この時間は甘く蕩けるような可愛い顔を晒してくれる。それが自分にだけとなれば、年甲斐もなく心躍ってしまうのは仕方がないだろう。
腕を羽毛布団からするりと抜け出させ、刺激を与えない程度に髪を撫でると少し硬いような、それでいて心地良い感触が掌に伝わってくる。何と幸せな時間だろう。
「ふふ、それでも……先を求めるのは悪い癖ですね」
まるで宝物のように優しく、大切にされるのは嬉しい。けれど、それと同時に湧き上がるのはいつだってもっと強い刺激だ。甘美な毒を喰らい過ぎて感覚が麻痺してしまったのだろうか、彼のその手で、壊れてしまうほどに愛されたい。獣のように欲望をぶつけてほしい。そう思ってしまえばしまうだけ、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。恥ずかしい話だ。
「イギリスさんのお好きなように、私を食べてくださいな」
夢の世界にいる彼には、きっと届かない。
逃げることすら出来ない。イギリスという極上の媚薬を飲み干した今の自分には、そんな思考はぐずぐずに溶け落ちてしまったから。なんて幸せなことだろう。
眠る彼の目元へ触れるだけのキスを落とし、再度布団の中へ潜るとゆるりと目を閉じた。今の時間が夢の世界だと、自分に言い聞かせながら。
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