涙の理由(キク+アルフレッド)
所用で出掛けたフランシスさんの代わりに、留守番を任された。
どうやら先程目が覚めたようだが、彼は何も喋らない。ただじっと窓の外を見て、行き交う人々の頭を眺め続けている。
今日もきっと喋らない。そう思った時だった。
「……なんで、フランシスは泣いたの?」
「え?」
思わず聞き返してしまう。
空とも海とも判別出来ない青の瞳が私を射貫くように見つめていた。
「俺は、何か悪いことをしたの?」
ああ、なんだ。彼はまだ判らなかったのだ。
少しずつ会話が出来るようになった喜びを。恐怖すら理解出来ない悲しみを。
だから、彼は代わりに泣いてあげたのに。
「大丈夫ですよ、アルフレッドさん。貴方は悪いことなんてしていませんから」
揺らめく蒼の炎は、彼の瞳に似ているのかもしれない。いいや、感情を忘れてしまった分、彼の炎が雄弁に伝えているのかもしれない。
だから私は少しだけ笑って、忘れぬよう彼らの記憶を少しずつ書き連ねていこうと誓った。
ALICE+