茹だる熱と暴走癖(米+日)
「私、貴方になりたかった」
「はい?」
会議終わりのディナー中に告げられた一言。意味がよく分からなくて思わず聞き返すと、日本はぐいぐいとテキーラを煽っていた。酒に弱い癖にそれぐいぐい行って大丈夫なのかい、なんて聞く間もなく空になるグラス。お代わりを求めてウェイターを呼んでは、グラスを意味もなく揺すっていた。いつもの引き結んだ表情はとうに解けて、目は完全に据わっている。なんというか、若干怖い。
「あの人の中心部には、いつだって貴方がいる。私では辿り着くことが出来ない」
あの人、恐らくイギリスのことだろう。
ああ、面倒くさい。まさか日本からもこんな風に恨み言を言われるなんて。つい一週間前にイギリスからも愚痴られたよ。お前は日本に近づき過ぎなんだよ、日本は俺のなんだからなって。
出そうになる溜息を飲み込んで、口を潤わせるためにジンジャーハイボールを一気飲み。喉がひりりと焼ける感じが堪らない。日本が頼んだテキーラも来たようだ。今度は一気に煽る様子はなく、ちびちびと舐めている。
「聞いてますか、アメリカさん」
「聞いてるよ、分かってるから大丈夫。別に俺だって好きでイギリスとつるんでる訳じゃないんだぞ」
宥めようと言った言葉が悪かったのだろうか、日本の眼はぎっと睨むようなものに変わった。俺、地雷踏んだかい、なんて聞く余裕なんてない。酒が入って暴走する奴の面倒くささはイギリスで充分経験済みだ。
だあん、とグラスがウッドテーブルに叩き付けられた。同時に残っていたテキーラがびしゃりと日本の手に掛かる。一瞬店はしんとしたけれど、彼はそんなことに構っていられる様子すら見えない。なんなんだ、いったい俺が何したっていうんだ。
「イギリスさんはねえ、貴方のことが大事なんです!私なんかよりずっとずっと!そりゃあ貴方は弟ですもの!縁も所縁も……同盟くらいしかない、なかった私などよりずっとつながりがある!」
「に、日本?」
「私は、貴方になりたかった!イギリスさんの愛情を一身に受けれる貴方に!」
そこまで言って、日本の顔からさあっと血の気が引けていくのが分かった。あからさまに分かりやすい、だってあんなに真っ赤だった顔が一瞬で土のように色を亡くしたから。
「し、失礼しました……私、帰ります。お代はこちらに」
言葉は言わせないとばかりに鞄とスーツのジャケットを引っ掴み、数枚の紙幣を机に投げ捨てる。本来の彼ならそんなこと絶対しないのに。
残された俺は思わず椅子を後ろに倒しながら、今日一番の溜息を吐き出していた。
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