Breeze(アルフレッド)



名前を呼ばれた気がして振り返った。けれどそこには誰もいない。
おかしいなと首を傾げても、やっぱりそこには誰もいなくて。気のせいかと視線を戻せば、びゅう、と風が吹き抜ける。
強い風に帽子を奪われぬよう、手で押さえつければ見えたのは何色かも分からない羽根。
綺麗だ、なんて脳裏に浮かんだ声は果たして誰のものだったんだろうか。
吹き抜ける風、舞い散る羽根たち。そう、確かに『俺』は美しいと心から思った。だってそれは『君』のものだから。
……君のものだから?
不意に浮かんだその感想は、泣きたくなるくらい心を揺さぶった。

「あの夢を見てから……時々姿を見せる君は、誰なんだい?」

ずっと探している気がした。逢わないといけない気がした。けれど、何かが忘れてくれと囁いていた。
その声は酷く震えていて。一瞬脳裏に見えたその影は俺を抱きしめて、枯らした涙で何かを叫んでいた。
それでも、それでも。忘れてはいけないと誰かは叫んでいる。もう一度、逢えと悲鳴を上げている。
……そうだ。俺はこの声に従わないといけない。いいや、俺の意志で探したいと思ったんだ。

「待っててくれよ、名前も顔も知らない君。絶対に探し出してみせるから」

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