星の雫
手を伸ばして、やっと届かないことを知った。兄弟なんて言ったって、彼と僕とは天と地ほどの差があるのだから。
超大国アメリカと、そのおまけの僕。
誰からも覚えてもらえない、ちっぽけで大きな国が僕だ。何度も彼と違うことをアピールしたって、認めてもらえない。気付いてもらえない。僕を育ててくれたイギリスさんだって、僕を覚えてなんてくれない。
一抹の不安は、いつだって僕を苛む。
いつか本当に、僕がいなくなっちゃうんじゃないかって。怖くて、寂しくて、会議が終わると誰にも見つからないようにトイレへ走って、声を殺して泣いていた。見付からないって知っているけれど、大声をあげて泣くなんて、僕には出来なかった。
小窓から見える空は、真っ暗で。いつの間にか長い間泣いていたようだ。泣き腫らして真っ赤になった目元を水で冷やしてトイレを出る。こんなにずっと泣いていたのは子供の頃以来だから、少し気恥ずかしい。誰にも、知られてなんていないけれど。
そんな時だった。遠くで慌ただしく走っている足音と、言い合うような声が、ふたつ。どちらも聞き覚えのある声で、思わず物陰に隠れて様子を伺えば、想像通りのふたりだ。
「だから!あっちにカナダはいなかったんだぞ!」
「お前の探し方が悪いだけかもしれないだろ、あっちは!?」
「もぬけの殻!」
どっと、冷や汗が身体中から吹き出した。
なんで、アメリカとフランスさんが、僕を探しているんだ。しかも相当焦っていた。何かしてしまったのか、考えを巡らせても思い当たる節なんて見当たらない。いつも通り会議に出席して、いつも通り存在感のない僕だったから。
足音が遠ざかっていくタイミングを見計らって、僕はそっとその場を後にして宛がわれたホテルへと逃げ帰った。どうしてかは分からない。ただ、泣いていたことを知られたくなかっただけかもしれない。
僕の部屋へ飛び込んできたふたりへ、笑って迎え入れるように、今はただ頭を冷やしたかった。
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