SS
2026/10/18 ▽1125
十一月二十五日。
いい二号の日じゃん。なんて一日の終わりかけにようやく気づいた私は、いつもお世話になっている二号に、たまにはあちらから甘えてもらおうかと考えた。
けど、さぁ甘えなさいと言って、はいわかりましたと素直に甘えてくるような子じゃないのだ。どうしたものかと足りない頭を捻りに捻りまくって出た答えは"まずこちらから甘えて自然な感じで甘えてもらいやすい状況を作る"というなんともお粗末なものだった。
うまくいく保証もないし、そもそも甘えたいと思っているかどうかすらわからないが、労いたいという気持ちがあればそれでいいでしょと半ば開き直りのような心持ちで寝室に赴き、博士オススメだというコミックスを読みながらごろごろとベッドで寛ぐ二号に「ね〜二号、ちょっといい?」と声をかけた。
「もちろん、どうかした?」
「あ〜、あのね、えっと、その……なんというか」
どうしよう。今更改まって甘えさせて、なんて恥ずかしくなってきた。
声をかけてしまったからには何か言わなければ。そう思うのに甘えるための言葉なんてなんにもでてこないし、寝転んでいたはずの二号は座りなおして黙って言葉の続きを待ってくれている。なるほど甘えるって思ってたよりも難しい、なんて焦る頭の片隅でぼんやりと考えた。
まごまごと言葉を探す私を見かねてか、くすりと零された笑みとともに、大きく開かれた両手が差し出された。
「おいで?」
「っ!うん!」
膝の上にお邪魔してぎゅう、と抱きつくと二号の部屋着から自分と同じ柔軟剤が香って、愉快そうな二号の声が頭上から降ってくる。
「ふふ、甘えたくなっちゃった?」
「えへ、お恥ずかしながら……。でもなんでわかったの?」
「だってキミ、帰ってきてからず〜っとそわそわしてるしボクのことちらちら見てるし、どんな鈍感だって気づくさ」
「そんなにわかりやすかった?私……」
「笑っちゃうのを我慢できないくらいにはね」
なんだか馬鹿にされているようで少し不服だけど、甘えるというステップはなんとかクリアできた。次は二号から甘えてもらえるようになんとかいい感じに事を進めるだけだけど、考えなしで突撃したせいで次の一手が何も思いつかない。
キスでもかましてやろうかと硬い胸板に頭を擦り付けて悩んでいると、一際強く抱きしめられぐるりと視界が回転した。気づけば私は二号と一緒にシーツに横倒しになっていた。なんで?
「それで?"ここ"で甘えてくるって事はそういう意味なんだよね?」
「あ、いや、別にそういうつもりじゃ……」
しまった。完璧に二号のペースに乗せられている。こうなってしまうとここから主導権を握り返すのはほぼ不可能といっても過言ではない。甘やかすつもりではあったけど、こんな展開は想定してない!
きしりとベッドから歪んだ音がして、馬乗りになった二号の意地悪そうな顔に見下される。
「ダ〜メ。今晩はたっくさん甘やかしてもらうつもりだから、覚悟してよ」
ああなんだ、全部ばれてたみたい。
ゆっくりと唇が寄せられる。至近距離で交わされる目線に、降参の合図として目を瞑り覚悟を決めた。
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