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「皇さん、ボクの出来うる限りフォローします。なので、一緒に誠凛に行ってくれませんか」
「…黒子の期待してるような役割は果たせないけど、それでもいいなら」

全中が終わってからの話だった。
あの試合を観て、黒子がどんな結論を出すのかはわかるようなものだったし、どんな試合の進行をするのかも、わかるようなものだった。彼はそういう人なのだろうから。短い付き合いではあったけれど、私の知る彼とは大きく違った方針を持っていたようだし。
黒子が誠凛以外を何故選ばなかったのかはわからないけれど、誠凛は私の進学候補の一つでもあったから稀有な縁だと思う。個人的な理由だし、黒子に伝えるつもりはないけれど、期待していなかったフォローが入るならこれ以上のことはない。未だ克服できていない恐怖心を隠しきって、活動できる自信はなかった。
黒子が何を為したいのか、彼の性格から考えればすぐにわかることだった。極めて難しいことであるし、きっと私に片棒を担ぐ役割を半分期待して話を持ちかけて来たのであろう。役割について断れば、わかっていたかのように頷いていた。

「皇さんが一緒に来てくれるなら、とても心強いです。ありがとうございます。」
「今の私じゃ、ろくに働けないと思うけど。フォローしてくれるなら助かるよ、こちらこそありがとう」

目指すものは違うけれど。一緒に頑張ってくれる友だちがいるのは、これほど安心できるものなんだな。私は、私の為さなければならないことを成さねば。黒子のことは余裕があれば手を貸すことにしよう、幸い私の恐怖心を知っているのだから。
言われたとおりに、強かに心を持たなければ。
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