確定消すな  



 
リヴァイ
 不機嫌な恋人の相手をするくらいなら
巨人と戦っていた方がマシだと思う。そ
んなことを口に出したら間違いなく口を
削ぎ落とされるから言えないけれど。
 目だけで人を殺せるのではと思えるほ
どの眼光で私を無言で睨む男は、私を壁
に追い詰めると動きを止めた。どうして
こんなことになっているのかわからず困
惑するしかない私はリヴァイ兵長から目
を逸らすことも声をかけることもできな
い。そしてなによりシンプルに怖い。
 ここで「どうしたの?」と軽々しく聞
けばもっと機嫌を損ねるだろうし、無理
に両腕から逃げ出そうとすればもっと不
機嫌になるだろう。普段からあまり感情
を顔に出さないせいでこういう時に思考
が全く読めず困ってしまう。
「おい」「は、はい」
 しまった、思わず敬語で返事をしてし
まった。二人でいる時は恋人らしく敬語
は無しと言われていたのに。眉間に刻ま
れている皺がより深くなった気がする。
私のよそよそしい態度が気に入らなかっ
たのか、再び口を閉ざしたリヴァイに私
は余計に困惑した。どうすればいい、な
にがいけなかったんだ、人類最強の機嫌
を取ることがこんなに難しいなんて。
「リヴァイ」「なんだ」「……おいで」
 お手上げという意味も含めてリヴァイ
の前で両手を大きく広げれば、数秒なに
かを考えてからふんっと短く鼻で笑って
素直に抱きついてきた。背中に回された
腕の力が強くて息苦しい。けれどここで
引くまいと私も力を込めて抱きしめると
より密着するようにリヴァイが私に体重
をかけてきた。これでだめならもうだめ
だ、大人しく不機嫌な理由を聞いて謝ろ
うとしたのだが、少しだけ雰囲気が和ら
いだ気がしなくもなくもない。
 私の肩に頭を預け、胸に鼻先を押し当
て、静かに目を閉じてなにかを確かめる
リヴァイの行動の意味はよくわからなか
ったが、とりあえず恋人としての取るべ
き正しい行動は取れたと思う。迫る巨人
の大きな手から命からがら逃げ延びた時
と同じ安堵感だ。内心冷や汗をかきなが
らこれからはリヴァイの喜怒哀楽を表情
から読み取る訓練をしようと思った。



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