確定消すな  



 
加賀美ハヤト
 休日のショッピングモールを行き交う
人達にぶつからないよう二人肩を寄せ合
って歩いていたせいか、加賀美さんの指
先が私の手に触れた。すぐに離れると思
っていた感触は私の掌をなぞり、指の間
を押し広げて深く絡められる。ウィンド
ウショッピングをしていた視線を隣に向
けると、思ったよりすぐ近くに加賀美さ
んの整った顔がある事に気づく。もしか
して、買い物に夢中になっていた私をず
っと見ていたのだろうか。
「……加賀美さん」「はい、貴女の加賀
美ハヤトです」「……買い物しに来てる
んですけど」「もちろん、そのつもりで
すが?」「それならちゃんと売り物を見
て下さいよ」「ははは、そうですねえ」
 と笑う加賀美さんの朗らかな声とは裏
腹に、瞳は私を熱く見つめて離さない。
その瞳の奥に見え隠れするほのかな独占
欲に気づいて強く手を握れば、より強い
力で握り返された。
「……加賀美さん」「はい」「ワイン、
まだ家にありましたっけ」「ええ、もち
ろん……とびきり上等なものが」
 二人揃って踵を返し、足早に駐車場へ
と向かって歩き出す。せっかく買い物に
行ったのだからワインに合うつまみでも
買えば良かったと少しだけ後悔した時に
はもう加賀美さんの腕の中だった。



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