剣持刀也
「大人とか子供とか年の差とか世間体とか、そ
んなつまらないことを理由にして今まで僕の気
持ちを散々蔑ろにしてきた癖に!こんな都合の
良い時だけ優しくしないで下さい……!」
 いつもの落ち着いた刀也くんとは違う、冷静
さを欠いた言動だと思った。手首を掴む手は小
刻みに震え、私を睨みつける瞳は涙が滲んでい
る。眉間に皺を寄せて奥歯を噛みしめる表情は
痛みに耐えているようだった。
「振るならちゃんと振ってださいよ!そうじゃ
ないと……勘違いしたくなる」
 私より高い背、私より広い肩幅、私より強い
握力。その全てが十六歳でありながらもう大人
の男とさほど変わらないはずなのに、私の肩に
頭を乗せて悔し涙を隠しながら喉奥で嗚咽を圧
し殺す姿はまだ子供のままだった。


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