昔からここに出入りしているエロ親父共の洗脳おかげでか、私はすっかり思考が可笑しくなっている自覚はある。

バイブやルーター、ディルドや電マがどんだけ気持ちいいんだろうかと気になるし、ローションプレイとかもしてみたい。
コスプレプレイも気になるし、青姦って興奮すんのかな、とか。
オナホとまんこは実際どんだけ似せてんだろ、とか。
こんにゃくで代用出来るってまじか、とか。

頭ん中こんなことばっか考えてる私は、でも鋼鉄の処女だ。がっつり膜ありだ。

悲しいことに、まだ高校生。
自宅暮らしの為、気になってるがアダルドグッズも買ったことがない。


でもエロい事はしてみたい。
そして、どうせなら処女でも気持ちよくなりたい。
そしてめくるめく官能の世界へと連れて行って欲しい。
出来れば素敵な人と交われたら最高だ。


ヤリチン先輩なら、そんな私の望みを全て叶えてくれるに違いない。


先輩がバイアグラとつぶやいたあの瞬間、確かに電撃が走ったのだ。




あれから。週に一度は我が薬局にやってきては見えない袋に入れて何かを購入していくヤリチン先輩。

そんなヤリチン先輩に、私はリサーチとアプローチを兼ねて興味深々に尋ねまくった。


「先輩、処女膜破るの興奮するタイプですか?」

「パンティは真ん中開くタイプとか好きですか?」

「ルーターと一緒に突っ込んだことありますか?」

「まんことアナルって、どっちが突っ込んだら気持ちいいんですか?」



などなど。
私の質問に全てずっこけたような反応する先輩は、どうやら突っ込みの気質も兼ね揃えているらしい。なんてオールマイティ!
まあ、でも結局ひとつもまともに答えてもらえたことはない。

私が処女だから教えてくれないのかな。処女膜あったって心の中はエロいことばっか考えてるのに!


まあ、とにもかくにもそんなわけで。

今、このように。
いつのまにか、私に呆れ返る黒羽先輩が出来上がってしまったというわけだ。



このままじゃ、私の処女貰ってくださいなんて言っても、軽く流されてしまいそう。

ヤリチン先輩は百戦錬磨だろうからって、処女なりに先輩の好みに沿おうと色々質問なんてしなきゃよかった。

何も知らないけど、教えて下さいって、三つ指付いてお願いした方がもしかしたら簡単に事は進んだかもしれないなんて。




「恥ずかしがる感じがお好きなら最初からそう言ってくれれば良かったのに」

ぶちぶちと一人愚痴る私を見て、ヤリチン先輩は片眉を上げた。

「いや、おめぇのその溢れんばかりの変態っぽさは、隠しきれねぇよ、絶対」
「失礼な!私、ちゃんとオンオフ切り替えれる子!学校じゃちゃんと大人しくしてますー」
「…たしかに、騙されてる奴何人か居るな」

ーーこいつの本性しらねぇ癖に大和撫子とかなんだか言って浮かれあがった奴らが。


何か小声で呟いたと思ったら、頭の上にシャンプーをするかのように両手を乗せられて髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。


「ったく…。こいつのことなんも知らねぇ癖に」
「先輩、髪、絡まるー!!」
「あ?ちょっとくらいボサボサになっとけ。無駄にサラサラした艶髪しやがって。そんな綺麗な黒髪してガッコで大人しくしてっから、無駄な期待するやつが出てくんだよ」
「意味わかりません!」


私が期待してるのはヤリチン先輩とのめくるめく初体験だけなのに!
そう、めくるめく!!
こんだけわかりやすくアプローチしてるのに、ヤリチン先輩の癖になんで全然気付かないんだ!


「もはや、ストレートに言うしかないのか…」
「は?」
「いや、先輩に私の処女を捧げたいんですが、中々わかってもらえないのでストレートに言おうかと思案中なんーー」


…って、まんま言ってしまった。
もうちょっとエロく誘おうと思ってたのに!

顔を上げると、黒羽先輩が驚いた顔をして頬をうっすらと紅く染めていた。
イケメンのセキメン。韻を踏んでるな、とその表情のあまりのインパクトに思わず思考がおかしな方向にいってしまう。


「…あの、えと。性欲が有り余ってて、たまには新しい子でも試してみっかなー、的な時で構いませんので。お試し食べしてもし気に入って下さればそりゃーー」

「もーいいから、黙っとけ」

途中で言葉を遮られた。私の必死のアピールが。
口元に手をやりながら、未だ少し赤い目元で、ヤリチン先輩は私を見つめてくる。


綺麗な蒼い瞳に見つめられると、どうしていいかわからなくなる。



全てを見透かすかのようなその瞳に、私はどう映っているんだろう。





「ーーもしかして。オメェのあの頓珍漢な質問の数々は、そう言う意味だったのか?」
「頓珍漢って!真剣なリサーチの一環です」
「オメェのリサーチする方向性が酷すぎるのは置いといて…なに、捧げてくれんの?」


尋ねて来たその瞳は真っ直ぐに私を射抜いたまま。
思わずこくこくと、首ふり人形のように首を縦に何度も動かした。

瞬間。その瞳が甘く溶けて。どこか唇が艶めかしく光る。

さすがヤリチン先輩だ。その表情だけで腰が砕けそう。



耳から首裏にかけて、先輩の大きな手のひらが触れた。
ぐっ、と力を込められたと思ったら、眼前に、整った顔が迫って。

うわあ、と思わず椅子から仰け反りそうになったら、不満そうな声が聞こえた。


「…やっぱ冗談?」
「いやあの、まさかチューまでして頂けると思ってなくて…」

多分、これはチューの流れなはず。違ったらとんだ調子乗りだけど。

「嫌か?」
「とんでもない」

ぶんぶんと首を振ろうと思ったら、そういや先輩の手に固定されてたなーーと思った瞬間に、唇に柔らかなものが触れた。

本当にキスされた!私のファーストキス!すごい!先輩の唇柔らかい!!

思わず目を見開くと、形の良い瞼が薄く開かれて。
蒼い瞳が、いたずらに微笑んだと思ったら、再び柔らかな唇が合わさった。
そのままぬるりとしたものが口内に侵入してくる。
ベロチューだ!と思った瞬間。優しく、突くように舌先をつんつんされた。

まるで入って良いですか?と確認してくるような舌の動きに、思わずどうぞどうぞと声に出しそうになる。
ここは舌で返すべきだとはっと気付いて、ドキドキと私からも先輩の舌につんと触れた。


その瞬間絡まる舌に、思わずんん、と声が漏れる。
やばい。べろちゅーとかもどんなもんかと思ってたけど、すっごい気持ちいい。
さすがヤリチン先輩だ。

お返ししないと。
なんだっけ、上顎とか舐め上げれば気持ちいいんだっけ?

頑張って動き出そうと試みるも、絡まっていた先輩の舌がむしろ私の上顎や、舌の裏を舐め上げてきて。

口ん中ってこんなに気持ちいいもんなの。
鼻に抜けるような音が、自分から漏れてるのがわかる。


どちらのものか分からない唾液が溜まってきて、そのままごくりと飲んだけど、溢れたそれは私の口から少し溢れた。

そこでゆっくりと引き抜かれた舌は、私の唇をぺろりと舐めてようやっと離れた。

首裏から持ち上げられていた身体は、力が抜けてどさりと椅子へと倒れこむように腰から、崩れ落ちて。

ぼんやりと溶けた脳みその中、レジが目の横に映った。

ここが店内だってことをそういや忘れてた。
客来なくてよかった。閑古鳥鳴くような店でよかった。


見上げた先には、唾液でか濡れた唇が光るヤリチン先輩が。
変わらず澄んだ蒼い瞳で私を見据えている。

やっぱり私ばっかり気持ち良かったのだろうか。
場数を踏めば先輩を満足させて、蕩けた瞳になってくれるのかな。


「…すごく気持ち良かったです。ありがとうございます」

本当はもっと感激!と伝えたかったんだけど、ちょっとあまりの気持ち良さにいつもの感じで言えなかった。とにかくぺこりと一礼しつつお礼を言うと、先輩は破顔した。
いつも呆れた時にしか細められない瞳が、愛しげに細められた気がして、どきりとする。
いやいやいや、勘違いは危険。ヤリチン先輩は笑顔ひとつでオトメゴコロを刺激するんだから、本当おっとろしいわー。

「気持ち良かったなら良かった」
「はい、特に上顎とか歯の裏がやばかったです」

詳しく感想を言うとげらげらと笑われた。先輩は、笑ったり呆れたり忙しい人だ。
くるくる表情が変わるので、ずっと見ていてしまいまくなる。


「素直でよろしい。で、どーする?」

やんの?と首を傾げた少しあざとい、その表情が物語っていた。

え、ここで?


「いや、薬局プレイはちょっと、初心者には…営業中ですし」
「しねえよ!アホか」
「え、でも私今店番中でして」

部屋戻れないしな、と思案していると、ぽかりと頭を叩かれた。

「いたい」
「前から思ってたけど…おめぇ、俺のことどんな風な奴だと思ってんだホント。本気でヤル気なんか?って聞いてんだ。さっきのキスで、尻込みしてねぇ?」

なんだ。確認か。
意外と紳士だな、先輩。ただのヤリチンではないのか。さすがイケメンヤリチン。そこまでがっつかないのか。


「いえ。むしろ気持ち良かったんでがんがん行こうぜ、的な」
「…なんつうか、こう…まあいいか。希夜だしな…。ーーほんじゃ、来週、木曜ーー」



意味ありげに引き伸ばされた言葉と共に、ぐい、と耳朶を引っ張られた。







ーー俺のウチにおいで。


そう、耳の中にダイレクトに囁かれた。これぞ桃色吐息と言うやつか、と言いたくなるような下腹部に響くエロい声。


ついでとばかりに、耳の中で舌が動く。くちゅり、という水音が鼓膜を刺激して。驚きと、耳の中でぞわりとくる感触に、思わず叫んだ。


「うわああ…!」
「そこはもっとエロい反応してほしいとこだけど」
「ーーはっ。あ、しまった!あまりの衝撃に」


私の反応にクックと喉で笑って。
じゃ、木曜連行すっから、よろしくな。とヤリチン先輩はどこか満足気に去っていった。

舐められた耳を手のひらで覆いながら、呆然とその後ろ姿を見送って。


ーーエロいチューに、耳舐めまでして人を興奮させといて。

木曜までお預けってこと?焦らしプレイ?




なんでだろ。木曜が先輩身体空いてたのかな。


まあ何にせよ、夢の初エッチだ。
エロい下着買いに行こう。
駅前のあの店、気になってたんだ。とうとう行く日が来た。


あ!先輩がパイパンか自然派かどっちか好きか聞いてない!

…どっちだ。どっちなんだ。
先輩の為ならパイパンも辞さない覚悟ですが。

取り敢えず、いつでも剃れる様に木曜は剃刀持ってくか。



うーむ、と色々と悩みながらも、ウキウキと店のカレンダーに来週の木曜ーー6月21日に花丸をつけた。


うん!ばっちし!
おとんにこの日は店番しないって言っとかないと!