私たち5人は廃墟の一室にいた。
コンクリートが剥き出しで、電球の一つも設置されていない。
窓はないが、外の景色を見ることのできる枠組みはある。
…まぁ、見えるのは空ばかりではあるが。
どちらかというと、廃墟というよりは立体駐車場に近い建物なのかもしれない。
室内も外も暗いため、多分真夜中なのだろう。
それにしても、ここに来るまでの移動で床から落ちた人は初めて見た。
移動途中で逆さまになるなんてよくあることだ。
床から落ちないことも当たり前。
幸いそれほど高い場所からの落下ではなかったため、尻もち程度で済んで良かった。
T.Yらしいと言えばそうなのだが。
私は改めて周りを見渡した。
メンバーは私を含めて5人。
私、Y.Y、S.N、T.Y、そして若い女性が1人。
私には、これから起こるであろう出来事がわかっていた。
前回の時は逃げたため、人形たちが凄い形相で追いかけてきて大変な目に遭ったのだ。
今回もあの恐怖を味わうのだろうか…。
これから起こる出来事を、S.Nも知っているようだった。
暗い室内で、私たちはその時が来るのをただ待つことしかできない。

暫くすると部屋の扉がゆっくりと開き、全長30p程の人形が現れた。
一体誰の人形だろう…
S.Nだ。
私は緊張で鼓動が早まると同時に、自分ではなかったことに安堵した。
S.Nは冷静だった。
「私だ」と苦笑混じりに呟くと、ゆっくりと立ち上がって扉へ向かって歩いて行く。
そのまま人形について行ったらどうなるか…予想はついているだろうに。
きっと、もう戻っては来られない。
それでもS.Nは、仕方がないと諦めながら人形の後について部屋を出て行った。

扉が閉まると同時に、部屋に静寂が訪れる…。
前回のような目に遭わなかったことに安堵しながらも、次は自分かもしれないという不安を抱えながら、ただひたすら次の迎えが来るのを待っていた。

[2018年10月22日]

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