目を開けると森の中。
空に向かって高々と伸びた木々に囲まれ、生い茂った葉の隙間から光が差し込んでいた。
起き上がり辺りを見回していると、不意に現れた青年。
彼は“チェシャ猫”と名乗り、私を“アリス”だと言った。
私は否定したが、それでも尚、彼は私の事を“僕たちのアリス”だと言い張った。
彼は私に『元の世界に帰りたいか』と尋ねた。
もちろん私は頷いた。
すると彼はこう答えた。
『元の世界に帰るには、10の扉を探さなければいけない』と。
しかし此処は森の中。
周りは木ばかりで扉なんか見当たらない。
私が不満を漏らすと、彼はふわりと宙に浮いたまま『こっちだよ』と森の中を進んでいった。
彼の後を歩いてついていく。
辿り着いた先はやはり森の中。
しかし、その少し拓けた場所には、その場に不釣り合いな扉が1つ、ぽつんと置かれていた。
アンティーク調で、繊細な飾りの付いた綺麗な扉。
彼に促され、私はゆっくりと扉を開いた。

そこは、私が通っていた高校の廊下だった。
右側には教室、左側には窓が並んでいた。
やけに静かな校内。
誰もいないのだろうか?
私は見慣れた廊下を歩きながら、ふと教室の中を覗いた。
そこにあったのは、無造作に積み上げられた人々の身体。
制服を着ているので多分、生徒なのだろう。
よく見ると積み上げられているのは身体だけで、頭がない。
それにしても数が多い。
あと少しで天井まで届きそうだ。
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