自宅のリビングで、家族揃って焼き肉をしていた。
焼き肉の煙で部屋の中は白く、壁には何匹もの蝶たち。
ヒラヒラと舞う蝶や、蛾ではないかと思われる容姿の蝶。
とにかく様々な種類の蝶たちが、そこには居た。
一際目を引いたのは、綺麗なスカイブルーの蝶だった。
サイズは片手ほどで、壁を這うようにして歩いていた。
羽根は付いているものの胴体はオマール海老のように太く、尾の先は僅かに内側へ丸まっていた。
そんなに立派な胴体で飛ぶことが出来るのだろうか?
重たくて飛べないのでは?
そもそも蝶という認識で合っている?
暫く眺めていたが、その蝶が飛ぶ様子はない。
一体誰が捕まえてきたんだろう。
いや違う、捕まえてきたのは私たちだ。
『じゃあ行ってくるね』
いつの間に準備をしたのか、虫カゴと網を手に持った母親と妹がそう言った。
『いってらっしゃーい』
微塵も疑うことなく彼女たちを見送った私は、窓の外を見た。
外の世界は白かった。
どこまでも続いていそうな白い地面、周りに民家は見当たらない。
ただ、数百メートル先には壁のように立ち塞がる白い建物があった。
各部屋に窓があるようだ。
彼女たちはその建物へ向かって歩いていった。
暫くすると、虫カゴいっぱいに蝶を捕まえた彼女たちが帰ってきた。
そして、捕まえた蝶たちを部屋の中へと放し、再び食事を楽しんだ。

[大学時代,自宅にて]

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