己の膝上に座り、隙間をなくすようにしがみついてくる
現在地、自宅の風呂。即ち、互いに一糸纏わぬ姿で密着しているということである。しかし、菫と
――俺たち付き合ってるんだよな?
口には出さず、胸の内だけで繰り返す。なんだかんだと、そういう関係に落ち着いたと思っていたが、違ったのだろうか。
年頃の男女が共に風呂に入っていて、色気のひとつもないというのはどうなんだ。少なくとも、菫はもう少し自分に警戒心を抱くべきではないのか。違うのか。
考えるのは、あまり、得意ではない。
湯船の縁に両腕をかけ、なるべく、瑞砂からは菫に触れないように気を付ける。菫から強く抱き着いてきており、腹の辺りに柔らかな温もりを感じているが、意識を逸らすように視線を天井へ向けた。
『みぃちゃんと映画を観に行くの。
今朝、瑞砂が仕事に出る前、菫は嬉しそうに笑っていた。
『あー、俺はやめとけって言ったんですけどね。すみが平気って言って聞かなくて……』
『あんなに怖いだなんて聞いてない』
『ホラーって最初に言っといただろ。すみません、
『いえ、こちらこそご迷惑をおかけしてすんません』
無邪気に好奇心旺盛。怖いもの知らずの負けず嫌い。そういうところが、菫の憎めず、可愛いところ――と瑞砂が思っているわけでもなく。
自宅に戻ってからも小さな物音に大袈裟に怯え、瑞砂が見える範囲にいないと泣き出しそうな顔をする始末だ。風呂はどうすんだと思っていたら、これである。
瑞砂としては、菫が気にしないのなら構わないのだが、後々になって文句を言われたりするのではないだろうか。そこまで理不尽な女ではないとも思うが、どうだろうか。
「なんでぎゅってしてくれないの」
下から不満そうな声が聞こえ、視線を落とす。僅かに顔を上げた菫の頬は上気して朱に染まり、恐怖からか丸いふたつの瞳が濡れている。
今にも泣きそうな顔をする菫を抱きしめてやり、瑞砂は小さく息を吐き出した。
――俺じゃなかったら据え膳かもなあ。
泣き虫で、我儘で、仕方のない幼なじみ。いい加減、肩書きがそこから出ていることを自覚して欲しいものだ。