大きな犬みたい。おれは犬なんて飼ったことも、触れ合ったこともないけれど。おれに懐くセシィクを見ていると、そんなふうに思う。犬を飼ったら、こんな感じなのだろうか。
 おれの膝の上にちょこんと顎を乗せて、おれを見上げるセシィクの髪を梳かすように指で撫でる。心地よさそうに目を細める姿は、安心しきっているのだろう。たぶん。人間の表情から何かを読み取るのは、存外難しい。
 思えば、この子は怯えた子犬のようだった。子犬のことも知らないけれども、こういうたとえを使っているのを聞いたことがある。なにかに――きっと、おそらく。彼と同じ人間という生き物に、彼は怯えていた。どうだろう。怯えとは違うのかな。でも、集団から外されているその様子は、怯えているようにも見えたのだ。
「セシィクがもう怯えなくて済むといいね」
 なんとなく呟いた言葉に、彼は不思議そうに目を瞬かせた。わからなくていいよ。知らないままでいい。気付かないままで。いいよ、そのままで。