相変わらず薄暗いままの和室。時計は正午を回ろうとしていた。懐かしいような畳の匂いが鼻を霞めた。
隣りで規則正しく寝息をたてるあなた。そんなあなたを、世界で一番近いところで見つめるあたし。
ほどいた髪も、綺麗な肌も、意外に長いまつげも、もうすぐで全部、あたしだけのものになる、なんて贅沢すぎるわよね。
「ん……」
あなたは寝返りをうち、仰向けの状態から横向きになった。お互いに向き合うような態勢になった。二十歳になっても、寝顔だけはまるで少年のよう。あたしは、そんなあなたが無償に可愛くてしょうがなくなって、あなたの頬をそっと触れた。
「ん……いの…?」
「あ……ごめん…起こしちゃった…?」
まだ寝ぼけているような、とろんとした目で見つめられた。そしてあなたは、あたしをそっと抱き寄せる。なんだか急に恥ずかしくなって、あたしはあなたの胸に顔を埋める。
「…おはよう」
「おはよ…」
「今…何時…?」
「十二時過ぎ…」
「起きなきゃなー…」
「そうねー…」
あなたはあたしから少し離れて、気持ち良さそうに思いっきり伸びをした。つられてあたしも伸びをする。
「もう、五年、かー…」
「明日、でしょー」
「そうだったな…」
「早いわねー」
明日、あたしたちは、付き合って五年を迎える。
そして、明日、あたしたちはついに結婚する。
今まで大切に育ててくれたお父さん、お母さん。
いつも近くであたしたちを見守っていてくれたチョウジ。
相談したり、愚痴ったり、色々と世話になっちゃったサクラ。
皆から祝福されながら、
奈良シカマルと、山中いのは、
結婚、します。
皆、本当にありがとう。
あたしたち、絶対幸せになるから。
「ねぇ」
「んー?」
「これからも、よろしく、ね?」
仰向けの状態のまま、顔だけあなたの方に向けて、最高の笑顔を贈る。そんなあたしに、あなたははにかんだ笑顔を見せる。
「ああ…よろしくな」
甘えるようにゆっくりと流れる時間。それでも、確実に明日へと向かっている。その先も、あたしたちの未来が待っている。
一緒に、幸せになろうね、シカマル───。
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2008.11.22
旧サイト開設5周年記念企画小説
Gleis36