「なまえさんって苦手な事あるんですか?」
「弱点はね隠すものだよ、炭ちゃん」


近くに来たついでに顔を見せてくれた炭ちゃんと禰豆子ちゃんたちと夕飯の準備をしている時の事でした。

鍛練にも付き合って炭ちゃん成長したなぁとか思いながらお味噌汁に入れるネギを切っているとそう言えばと炭ちゃんから質問が飛んできたんです。

まあ、苦手な事は色々あるんだけどねぇ…私も女ですし、隠したい事もあるんです。



「なまえは料理が苦手だったよな」
「えっそこばらしちゃうの?」


後ろからスッと現れた天ちゃんにより簡単に知られてしまった弱点。もー…今、料理の事言わなくてもいいじゃん。


「え!?今、料理作ってますよね?」
「ついこの間までは不味かったけどな!」
「天ちゃーん?」
「今は克服したからいいじゃねぇか」


何だか以外です。と口から溢した炭ちゃんに言い訳をしようとするとニッコリと笑った天ちゃんがまた口を開こうとしていた。これは良くないと予感。



「あとはー」
「はーーい、何でもなーい」
「むーーー!」


足元にいた禰豆子ちゃんを抱き上げて天ちゃんの肩にポンと乗せる。
ガシリと天ちゃんの頭を掴んだ禰豆子ちゃんに笑みが溢れ「天ちゃんと一緒にご飯待っててね」と言うとわかったとでも言うように声をあげて居間に行くように体を傾けていた。



「しょうがねぇな」
「禰豆子ちゃんとちょっと待っててね」
「…………」
「どうしたの?」


片手は禰豆子ちゃんを支え、もう片方の手で顎を擦る天ちゃん。表情は模索している様で…何かんがえてるんだろう?



「子供がいる嫁さんもいいな」
「うっ…そ、そこは旦那さんが頑張って下さい」
「任せな!ド派手に頑張ってやるぜ!」
「はいはーい」


今夜寝れるかな……。いや、いやいや、何でもない。何でもないです。急に何言い出してるんですか、全く。隣では後ろ姿の天ちゃんに禰豆子の事お願いします!と声をかけている炭ちゃんがいた。



「なまえさんってどんな料理を作っていたんですか?」
「え、まだその話する?」
「なまえさん卒なく何でもこなせる感じなので」
「そうでもないよ。まあ、お話するとあれは料理じゃなかったかな?」
「え」



少し前までの料理は料理じゃなかったと思う。味なんて二の次でまあ、少量で栄養が取れるもの且つ持ち運びの簡単なもの。そんなの美味しい訳ないよねぇ。

その話を炭ちゃんにすると確かにと口を引き攣らせていた。

うん、たぶん想像しているより酷い味だと思うよ。



「どうして、料理が作れる様になったんですか?」
「宇髄家に来てからお金にも余裕が出てきて、気の迷いで甘味処に入ったんですよ」
「気の迷い?」
「どうしても家に帰りたくない。でも外を歩き回っていたら変な人に捕まったりするしどうしようかなぁって」
「そこで甘味処が目に入ったんですね」
「そうそう。前にあの人から貰ったお団子、甘じょっぱかったなーって」


あの時は美味しいって言うのが良くわからなかったけど、もう一度食べたいなぁって無意識に思ってたんだろうな。


「で、そこで食べたお団子がめちゃくちゃ美味しいの」
「もしかして」
「そう!炭ちゃんたちと食べに行った甘味処です」


パッとこちらを見た炭ちゃんに頷いて答えてあげる。
あの甘味処は私が人に一歩近づけた場所と言ってもいいほどだ。



「それに感動して料理を…?」
「ううん、もっと後だよ」


そう、私が料理をしなければと思い始めたのは極最近なんですよ。今のは私が味覚というのを、美味しいというのを知った時の話。



「本当に料理をしようと思ったのは鶴ちゃん達が吉原に潜入した直後」
「えっ!」
「わかるでしょ、炭ちゃん?」


鶴ちゃん達の料理めっちゃ美味しいの。私はそれをわーいと天ちゃんと一緒になって食べていたけれど、潜入している間、ご馳走はなし。
私の作っためちゃくちゃ不味い栄養補給の為の料理なんて耐えられなくなったんです。そこで漸く、思ったんです。

そうだ、美味しい料理を作ろう。



「じゃあ、初めて俺たちと出会った時に持ってきてくれたお団子は…」


すごく美味しかったですけれど、と炭ちゃんは続けて言葉にしてくれた。

美味しいって聞けて良かったー。練習に練習を重ねて作ったお団子だから。因みに一番最初に出来た美味しい料理は快気祝いの天ちゃん達にあげた。もう、嘘だろみたいな顔が忘れられない。



「料理が出来る様になり始めた頃のお団子だねぇ」
「そうだったんですね」
「炭ちゃんはお米炊くのも料理も上手だよね!」
「炭焼き小屋の息子なので!」


どやっと自慢気に笑顔を見せた炭ちゃんに、丁度できた美味しい夕飯を自慢しに行こう!と言うと元気良く返事をしてくれる。



「ご飯できたよー」
「おー!今日は美味そうだな!」
「今日は当たりの日ですね」
「もう大丈夫だよ、まきちゃん…」

「いや、味は良くても見た目が論外の時あるからね…」


言い返せないのが悔しい…。美味しければ良くないと思うから失敗してしまうんだろうな。

けど、それでも料理が出来る様に頑張ってるのはもちろん自分が美味しいものを食べたいと言うのもあるんですけれど、、



「よく頑張ったじゃねぇか」



こうやって天ちゃんが喜んでる姿を見れるのと頬を撫でてもらえるって言うご褒美があったりするからなんですよ。


さ、頑張った分、沢山褒めてもらお。