開幕。01


準備期間というものは存外早く過ぎ去るもので。
それなりに力を入れて作戦を立てた『鬼ごっこ』の当日はあっという間にやって来て、現在朝の8時50分。

「……」

俺は学園敷地の北東部、政科棟にほど近い森の中に身をひそめ、来たるゲーム開始の合図を待っていた。

天候は曇り。
1時間に数回太陽が一瞬顔を出す程度。おそらく天気は回復に向かうだろうが、弱い雨が降る可能性もある。
前日に降った雨の影響で地面はぬかるみ、足場がいいとはいえない。気温はさほど高くはないが、湿度が高いため激しく動くとじわりと汗をかくだろう。
……総合的に見て、逃走に適したコンディションとは言いがたいが……、まあコンディションに関しては鬼側からしても条件は同じ。文句を言うわけにもいくまい。

持ち物はサリバン先生の忠告通り、最低限に抑えたつもりだ。
水、戦闘後の糖分補給用の飴玉数個、雨後で足場が悪いことを考えて靴下の予備を2足。
遭難防止用の方位磁石、時計。
懐にはアルバ、シュカ、サーシャ、リールに位置を伝える付箋。

そして、リール作の通信機。
ヘッドセットマイクの形に作られており、耳に当てる部分に黒い天然石が付いている。
この石にリールの魔力と命令術式が刻まれており、これを指で押さえながら話すことで4人に言葉が届くようになっている。
……これを簡単に仕上げてしまうのだからそりゃ『天才』とも呼ばれるわなあ、という感想だ。今回はそれがとてもありがたいけれど。


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