月と蛍 私たちが出会ったのは中学1年生
の頃。同じ町の、隣の小学校で同じ
中学校に通う生徒でした。1年生の
頃は偶然にも同じクラス。2年生は
惜しくも離れて3年生は再び同じク
ラスでした。
1年生の頃はお互いただのクラス
メイト程度で席が隣になれば教え合
うくらい、もし同窓会であったなら
ば久しぶりだねくらいの仲でした。
当時からあまり話しかけないでくれ
というオーラを出す彼と、人と話し
たいけど上手く話せない、臆病だっ
た私。蛍くんは男子バレー部、私は
剣道部。お互い活動場所も違うけれ
ど部活の帰り際にバレー部が部活を
していのを何度か見かけていました
思えばその頃からすでに蛍くんはあ
まりバレーボールというものが好き
にはみえませんでした。
然し、時折チームメイトに見せる
笑顔を見る度に、彼はバレーボール
を続けるのではないかと、なぜだか
そう確信していました。
大人数で纏まっていなきゃダメな
群れている女の子たちが苦手だった
私は1年生の後半くらいからはその
類いに入る同じ部活の子から無視さ
れたり仲間外れにされてひとりでい
ることがしばしばありました。しょ
うがないと考えていたし先生に伝え
たら親に伝わってしまうし、頼りた
くなかった、頼り方を知らなかった
私はひたすら独りで耐えていました
剣道一筋で頑張っていたので初め
は特に気にしていなかったけれどチ
ームメイトとお互いにアドバイスを
する時などは聞くだけで話さないし
話しかけてもくれなかったので正直
辛かったのを覚えています。
2年生の夏休みの部活、暑いしダ
ルいし、チームメイトのこともあり
乗り気じゃなかった私。休憩中にも
例外じゃなく女の子たちに仲間外れ
にされてひとりで水飲み場に行けば
そこにいたのが蛍くんでした。素っ
気なさそうに見えた彼は1年生の頃
からもそうだったけれど人一倍人を
見る目があるらしく、わたしが部活
に馴染めていないのは分かっていた
らしいのです。そんな彼が
「仲間外れにされてるんだ
ね、お前。」
言葉を述べた時に私は凄く頭にきて
『なんも知らないくせになんでそん
な事言うの、月島くんに私の事なん
か分かるわけないのに!』
と大声で怒鳴ったのを覚えています
完全なる、ただの八つ当たりです。
そんな私に蛍くんは
「なんで僕には言えるのにあいつら
には言えないの」
と、ぶっきらぼうに、静かに、冷め
た目で少し不思議そうに聞いてきま
した。引っ込み思案で人のことをた
だ何も言わずに聞いているだけだっ
た私が蛍くんのその言葉に酷く納得
して彼の前で大泣きしたのを覚えて
います。彼はそんな私に何も言わず
泣き止むまでそばにいてくれました。
彼の言葉は私自身の悩みを代弁して
くれたようで、ひたすら泣きじゃく
っていました。
その後泣いている私の元に顧問が
駆けつけて結局いじめの件がバレて
しまいました。やっと終わる、と思
うと同時に少しだけ、嗚呼、面倒く
さい。そう思ってしまったのは今で
も覚えています。これは私にとって
黒歴史のうちのひとつになりました
が私が蛍くんと近付くきっかけなの
で思い出したくない事だけれど、わ
たしの大切なおもいでです。
彼のこの時の言葉が私を変えてくれ
ました。