はちはと
「暑いね」と曖昧な笑顔を浮かべた鳩原に、そうだね、と返せなかった一瞬を。今も後悔している。
茹だるような暑さに太陽の光を容赦なく反射して肌をジリジリと焦がすコンクリート、サイレンのようにけたたましく鳴く蝉の声。蜃気楼で歪んだ地平線も、何一つ忘れていないのにただ、鳩原の次の言葉だけが思い出せない。
曇天
短編