雲桜


「ショバ代、5万ね」

カチャリと音を立てて構えられたトンファーに、屋台の店主は小さな悲鳴を上げて恐らく5万入っているであろう封筒を並盛中学校風紀委員長...雲雀恭弥に手渡した。
封筒を受け取った雲雀先輩は満足そうに笑ったあと、「次」と言って隣の屋台へ向かった。

「あっ焼きそば!」

食欲をそそるいい匂いがして、思わず声を出してしまった。
あ、やばい、雲雀先輩の邪魔をしてしまった... 恐る恐る隣にいる先輩を見上げると、予想に反し怒った様子のない雲雀先輩にほっと胸をなでおろす。

「....なに、食べたいの」
「えっあ、えっと、はい!」

突然の問いかけに慌てて答えると、「ふーん」と興味のなさそうな返事が返ってきた。
...先輩から聞いてきたくせに。

「ねぇ、何してるの。早く作りなよ」
「雲雀先輩!?」

トンファーを構え先程と同じように店主に脅しかける雲雀先輩を慌てて制止する。
あれ、おかしい、興味ないんじゃなかったの!?
脅された店主は顔を真っ青にしながらショバ代の入っているであろう封筒と、まだ暖かそうな焼きそばを差し出した。
トンファーを構えるのをやめショバ代と焼きそばを受け取った雲雀先輩は私の方を見て「君が食べたいって言ったんでしょ」と言うと、屋台のある通りをはずれ神社の階段を降りていった。

雲雀先輩の優しさはいつも分かり辛い。
そういう所も好きなんだけど。

「(....ん?好き....?)」

一瞬、立ち止まり頭に浮かんだその単語の意味を考えるが、先を歩いていた雲雀先輩の「遅い」と言う言葉に考えるのをやめ急いであとを追いかけた。


夏祭り




短編