長い長い夢を見ていた。
久々に目を開けたら太陽の光が思っていたより強く、目の奥がきりりとした。
ぼんやりした記憶を手繰り寄せ、前に目覚めた時よりしっかり覚えていることを確認する。
「おかえり、友よ」
リズの泣きそうな笑顔に見守られ、クロムの手を取った。
「ただいま」
身体は前より軽い。


あれから3年の月日が流れていた。
長くも短いその間、自警団のみんなは一生懸命あたしのことを探してくれていたらしい。もしかしたら二度と戻って来れなかったかもしれない、目覚めたのも奇跡だったのになあ。
かたかたと心地よく揺れる馬車に揺られながら、初夏の香りを孕んだ風に吹かれるのは心地よい。眠りにつく前とは違って平和になったんだと改めて実感した。
「帰ったらシャワー浴びたいわ、決戦前夜からまともに身体洗ってない気がする」
「おまえなぁ、フレデリクに1番に会わなくていいのか?」
隣に座るクロムが困り顔で笑った。
「ルフレがいなくなって1年は弱ってて困ったよ。熊肉も真顔で食べるくらいだったからね」
正面のリズはフレデリクに呆れているようだ。ぶらぶらさせているリズの足をなんとなく眺め、
「そうねえ……」
ほぼ老人のように扱われるであろう場面を想像して、よくわからない気持ちを吹き飛ばすように息を吐いた。
世話焼きな彼だから、居なかった分を取り戻そうと過剰に世話をするに決まっている。

馬車が城壁をくぐり、城前に止まった時である。
「ルフレ様!!」
案の定、鎧の男が石畳を壊す勢いで駆けつけてきた。外からそのまま真っすぐに来たのだろうか、左手には物騒にも斧を握りしめている。
「ルフレ様! 戻ったならばすぐに私のところに来てくだされば良いものの……!」
「あー、ごめんごめん。仕事中だと悪いかなと思って……別に後回しにしてた訳じゃ」
これは説教モードだなと身構えた瞬間、フレデリクは斧を左側に置き、ゆっくりと膝をついた。全く予想外の反応だ。
彼の黒によく似た茶髪が風に吹かれ、ふわり揺れている。
「戻ってきてくださって、本当に神に感謝しきれません」
狼狽えているあたしの左手を、彼の両手が包み込んだ。ガントレットがひんやりと冷たい。
「おかえりなさい」
ややあって顔を上げたフレデリクは、大粒の涙をぼろぼろと流していた。

「ただいま、愛しい人」
逆光で見えないだろうから、お返しに今までで最高の笑顔で泣いてやった。





Fin

FE覚醒クリア記念'19.07





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