気がつけば暗闇と自分の境目がないぐらいの真っ暗闇に佇んでいた。
認識し始めてから夢だろうと思ったのだが、いつもの悪夢と比べて少し違和感があり、感覚や意識が現実と大差ないほど冴え渡っていた。
このままでは仕方がない。歩き出そうと一歩踏み出すが足音は響かず、暗すぎて踏み出した右足も確認できない。一縷の光さえない暗闇だ。
ちょっとだけ恐怖心が湧いて、ちりちりと指先が痺れたような気がする。行かねば、何か焦燥感に突き動かされて私は歩き始めた。


暫く歩くと目の前にどこかで見た青い蝶が舞うように横切った。蝶が纏う十五夜の月のような輝きに一瞬心奪われて眺めてしまったが、それが何かと考えるよりも早く捕まえようと駆け出した。
暗闇を真っ直ぐ突っ走っているのにも関わらず、不思議と恐怖心は薄れている。

「まって」
もう少しで、捕まえられる。
少し手の先へ誘うように舞う蝶が、手を伸ばした途端に眩しく輝き始めた。突然の眩しすぎる光に瞳孔が小さくなるのが自分でも分かる。思わず腕で目を庇った。


このくらい意味不明な夢ならば、ここらへんで醒めるのがオチだが今回は違った。
「ニューヨーク……でもないような」
グラフィティアートが煉瓦の壁を彩る路地裏に、場違いな制服姿で立っている私。見える範囲の狭くて少ない夜空には、いくつものサーチライトが交差している。
いつの間にか右手に握られていたいつもの薙刀。武器を持っているということだけで安心出来る私自身に、少し呆れて苦笑いをした。もう「非現実」に慣れてしまったのだ。
武器を握っているということは言わずもがな、ゆらり路地裏を抜けた先にシャドウが3体。まだこちらに気付いていない。
このぐらいなら一人でも。
「ぺルソナ!」

意味のないことは起こらない、とベルベットルームの住人が言っていた。この夢か現実かわからない世界にはどんな意味が待っているのだろうか。
サーチライトが巡る夜空に月は浮かんでいない。





181129 PQ2記念





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