「お前もバスター使うのか」

少しだけ緑に見える月光を、その銀髪に受けたソーマさんがやや懐かしそうな面影を落として呟く。
彼の片手には純白の、私のものより少し刀身が小ぶりのバスターソードが握られているが、自分と同じ、との意味合いで言っていない気が直感的にした。
私を見ているのに、その向こう側の「誰か」を見ているようで何とも複雑な気分になる。
「同じ、なんですね。その人と」
詰まった言葉を吐き出す。
知らない人と比べられるのは気分が良いものではなかった。


帰投後の自分は誰がどう見ても不機嫌だった。
こんなときに限って煙草は品切れで入荷予定なし、倉庫にある嗜好品は不味いレーションと初恋ジュースのみ。
荒々しい態度のままガレージのカウンター席につくと、すぐに隣に雪丸くんが恐る恐る座った。
「怒ってる?」
笑ったら駄目だと思ったのか微妙に笑顔の中途半端な真顔で、耳の下より少し長めの金髪をふわり揺らす。
「なんでもないけど」
目前の真っ暗なコーヒーに映る自分を見た。そんな些細なことで頭にきているお前はとても醜いぞとばかりにコーヒーの向こう側に映る蛍光灯がちらちらと呆れて瞬いた気がした。
「なんでもないならなんでもいいけど」
カウンターテーブルに向き直った雪丸くんが、ポケットから豆電球と銅線、乾電池を取り出して回路を作り始める。見慣れたその光景を眺めるとどーでもよくなってきた。どーでも良かったことじゃないのに。
「第一部隊は濃い人ばかりだったって聞くからさ、同じく濃いブラッドの俺らが比べられても仕方がないんじゃない。無意識にユユちゃんも比べてるでしょ、ジュリウスとリンドウさんとか。フランさんとヒバリちゃん、とか」
彼がここまで察しが良い人だとは思っていなくて、思わず横顔を二度見してしまう。真面目なことを言ったに関わらず、相変わらず電池を眺めている。
「俺も比べてる」
ジュリウスがいなくなってから、色々と。今日の雪丸くんは違う方向で変だった。
雪丸くんの手の先で点滅する電球を横目に、真っ暗なコーヒーを啜る。背伸びをしたブラックは酸っぱい苦さだった。







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