ブルマの回想
10話後のお話。短め。主人公が登場しないため名前変換なし。
天下一武道会も幕を下ろし、大型ジェット機の中でブルマはふぅと一息ついた。ピッコロが街諸共吹き飛ばして荒地にしてしまい、空港がまともに機能していなかったためブルマが所持していた大型飛行機で帰宅することになったのだ。
「やーっと終わったわねぇ……」
「すごく長かった気もするし短かった気もしますね」
プーアルがそんなことを笑って言った。
「あー! そういえばあたしあの子の名前聞きそびれたー!」
「あの子?」
「ほら、あのピッコロのそばにいた子!」
「ああ……」
そう言われてすぐに全員の脳裏に娘の姿が思い浮かんだ。
青と紫のインナーカラーが印象的な、黒髪の少女。倒れたピッコロに真っ先に駆け寄り、離れまいとしていた姿は記憶に新しい。
「だって! あの大魔王に付き従ってるのがあたしと同じくらいの女の子よ!? 気になるじゃない!」
「いやまあそうだけどさ……」
ううむ、と亀仙人が唸り声を上げる。
「それにしても、あの娘……ちと顔つきはキツいがなかなかええ尻じゃったのぅ」
だらしなく顔を緩めて手を意味深に動かす亀仙人に、真剣な話だとばかり思って耳を傾けていた全員がずっこけた。その反応に「じょ、冗談じゃよ」、と若干どもりつつ慌てて付け足す亀仙人。
「でも不思議ですよね。あの娘、武道も何もやったことの無い一般人って感じだったのになんでピッコロに付き従ってたんだろう」
起き上がったクリリンがぽつりとつぶやく。
「そうねぇ、あたしとランチさんはちょうど近くにいて、武道館のほうや天津飯のあけた穴に引っ張っていったりしたけど、力とかは普通の女の子だったわね」
「人質とかにとられてたりして……? でもそれにしてはずいぶんとピッコロを慕ってる様子でしたし」
ふむ、と唸った亀仙人だが、すぐに思考を放棄した。なんだかんだで今日はとんでもない大騒ぎだったのだ。ふと見渡せば誰もが顔に隠し切れない疲労の色を浮かばせている。
「どっちにしろ今日のところは孫君が決着つけてくれたんだし、しばらくは考えなくていいでしょう。今日はもう全員へとへとだし、まずはカメハウスまで送るわよ」
頼んだぞい、と亀仙人が答えると、ブルマはハンドルを握りなおした。
脳裏には鮮やかに今日会った女の子の姿が蘇る。
ピアスを手渡してくれたときやピッコロの同伴者だと告げた時の落ち着いた表情と声音、ぎゅっと眉根を寄せて試合を見守るその表情、力なく倒れたピッコロを必死にかばう様子。
ブルマから見てもピッコロを慕っているのがよくわかった。
ピッコロのほうも彼女に並々ならぬ執着があるようだった。指が食い込むほど強く彼女の腕を掴んだ手には決して放すまいという気概が感じ取れた。
聞きたいことはたくさんあるが、今は急がなくてもいい。
(……あの子とはまた会うのはそう遠くないうちのような気がするし)
単なる勘だが、自分の勘はよく当たることをブルマは知っている。
くす、と可笑しそうに唇を吊り上げると、もう一度ハンドルを握りなおした。