22.戦士たちの集結

「念のために聞くが、きさまらここへ一体何しにきやがった」

 とんでもない気を真正面から受けながらも、ピッコロの声には動揺がまったく見られない。
 ぴく、と小柄なほうのサイヤ人の目元が動いた。

「その声……そうか、ラディッツを倒したのは貴様だな」
「声?」
「ラディッツが言わなかったか? こいつは通信機にもなっていると」

 とんとんと小柄なサイヤ人が左耳につけた機械を指で軽く叩く。
 ふと、何かに気づいたように大柄なほうのサイヤ人が口を開いた。

「あいつ、ナメック星人ですぜ」
「らしいな。ラディッツのやつがやられても不思議じゃなかったというわけか」
「ナメック星人……?」

 不思議そうにピッコロが聞き慣れないその単語を呟く。

「ピッコロ、お前も宇宙人だったのかっ? ど、どおりで……」
「そうなの? ピッコロさん」

 驚いたように視線を向けるセレナ、クリリン、悟飯には答えず、ぎりっとピッコロは歯を食いしばった。

 ピッコロと神は元は一心同体。大方、ピッコロ本人や、ひいては神自身も知らなかったのだろう。神や大魔王に分離する前の彼は、一体なぜ、地球に来たのだろう。
 ドラゴンボールから服や髪飾りといった細々とした物まで作り出すその能力は、神や大魔王だからでなく、ナメック星人そのものの力なのだろう。

「わかったぞ。ナメック星人は並外れた戦闘力のほかにも、不思議な能力を持っているらしい。そして、魔法使いのようなことができる奴もいると聞いたことがある。……ドラゴンボールとかいうやつをつくったのは貴様だろう?」

 にたりと笑った小柄なサイヤ人がピッコロを指差してそう言った。

「そのドラゴンボールが一番の目的だ。オレたちにおとなしく寄越すんだな。いくらナメック星人だってよ、一匹やそこらじゃオレ達にはハエみてぇなもんだぜ」

 呆然としていたピッコロは既に立ち直ったのか、強気な笑みを浮かべて顔を上げた。

「へっ、ありがとうよ。おかげでオレ様の祖先のことがなんとなくわかってきたぜ……だが、残念だったな、ドラゴンボールを作ったのはオレ様じゃない」

 オレ様は戦いのほうが専門なんでな、と口角を上げたまま構えを取るピッコロ。

「ハエみたいなもんかどうか、試してみやがれ!!」

 同時に、セレナや悟飯、クリリンも構えを取った。

(そうだ、今はピッコロさんの種族なんてどうでもいい。負けてしまえば殺されるのに変わりはないのだから)

 ぐっとあごを引き、ごくりと唾を飲む。

「ドラゴンボールのことなど教えるもんか……って感じだな」
「いいだろう、力づくでも言わせてやる。どれ……981、1106、1220、1083。バカめ、その程度の戦闘力で俺たちに歯向かうつもりか?」

 大男の嘲るような声が耳に障る。だが、おそらく戦闘力であろう呟かれた数字がクリリンたちとほとんど変わらない大きさだったことに、この一年間の修行も無駄ではなかったとセレナは息を吐いた。

「ナッパよ、スカウターを外せ。こいつらは戦いに応じて戦闘力を変化させるんだ。こんな数字はもうあてにならん」

 そう言って小柄なほうのサイヤ人は顔につけていた機械を外し、ぽとりと落とした。
 おお、そうでしたねと言って、ナッパと呼ばれた男も同様の行動をとった。

「弱虫ラディッツのバカは、スカウターの数字に油断してやられやがったようなもんだったからな」

 弱虫。
 その言葉にピッコロとクリリンが反応を示す。

「よ、弱虫ラディッツだと……!?」
「ラ、ラディッツって、お前と悟空が二人がかりで倒したっていう、サイヤ人だろ……?」

 答えないピッコロの態度を肯定と受け取ったクリリンは「はは……」と、引き攣った笑みを浮かべた。

(悟空さんの命を犠牲にして、ピッコロさんも片腕を失ってやっと倒したほどの人を、『弱虫』って、)

 当時ほとんど戦うすべを持たなかったとはいえ、あの時感じた恐怖は本物だった。それを「弱虫」と言ってのけた目の前のサイヤ人たちは一体、どれだけ桁外れな実力を持っているのだろう。

「そうだ。こいつらのお手並みを拝見させてもらおう。おいナッパ、サイバイマンがあと六粒ほどあっただろう。……出してやれ」
「ベジータもお遊びが好きだなぁ」

 愉快そうに言って、ナッパは突然、ごそごそとポケットをあさり、液体と粒が入った瓶のようなものを取り出した。唐突な行動に戸惑うセレナたちをよそに、手馴れた様子でナッパは粒を土に埋め、液体を振り掛けていく。
 そうして、少しの時間がたつと、ぼこり、と地面が隆起して、得体の知れない人型の生命体が顔を出した。
 緑色の肌に、目を刺すような赤色の目と口。頭部には葉脈か、毛細血管を思わせるような線がいくつも走っている。

「ひぇえ……き、気味の悪い奴らだぜ……」

お世辞にも美しいとは言えないその姿に、クリリンは嫌悪感をあらわにする。

 標的はあの四人だ、痛めつけてやれ、というベジータの言葉に、サイバイマンは甲高い鳴き声を発すると、一斉にセレナたちのほうを向いた。その身のこなしから、一筋縄ではいかなさそうだとセレナは息を吐く。
 戦いがついに始まるか、と思われたそのとき。

「クリリン!」

 と、鈴を転がしたような声が響いた。シュタッとすぐそばに降り立った、天津飯と餃子にぱっと顔を輝かせるクリリン。

「サイヤ人ってのは二人じゃなかったのか」
「まあ、色々あってさ……増えたみたい」

 サイヤ人を見据えたまま、何人いても同じことだ、という声のなんと頼もしいことか。
 そして、ちらりとセレナに視線を向けると、ピッコロの連れか、と静かに呟いた。興味津々といった餃子の視線が突き刺さる。
 簡単に自分の名を告げると、なかなかできるようだな、と口角を上げた。なんとも武道家らしい天津飯の返しに小さく微笑むセレナ。

 続いて、少し遅れてヤムチャが到着した。しばしの間再会を喜んでぐるりとその場を見回し、セレナに気づくと目を瞬かせた。

「ん? 君は六年前にもいた……」
「セレナです。微力ながら、お手伝いさせていただきます」
「そうか。だけど君は女の子なんだからな、あんまり無茶をしないようにな」

 見た目を裏切らず発せられたフェミニスト発言にどう対応すればいいのかわからず、とりあえずあいまいに頷いておく。

(私もう女の子っていうほどの年じゃないんだけどな)

 思わずそんなくだらないことを考えてしまう。見た目はほとんど二十代前半のまま止まっているため、仕方ないといえばそうなのだが。

 そして、ベジータがなんとも楽しそうな顔でゲームをしないか、と言い放った。
 内容はサイバイマンと一対一で戦ってみないか、というものだ。ゲーム、とはっきり告げられた単語にみるみるうちにピッコロの額に青筋が浮かび、怒鳴り声を上げたのをクリリンが制止する。

 オレが行く、と一番乗りをかってでた天津飯が見事勝利を収め、戻ってくる。そして、ヤムチャが出て行き、天津飯と同じようにサイバイマンを打ち倒して戻ってくる、かのように思われた。

 背を向けたヤムチャに、耳障りな声を上げたサイバイマンがしがみつく。引き剥がそうともがくヤムチャをものともせず、サイバイマンの身体が発光し……爆発した。
 土煙が晴れ、くぼんだ地面の中には散乱したサイバイマンだったものの残骸と、力なく横たわるヤムチャの身体。

「ヤムチャさん!!!」

 そう叫んだクリリンの声が、やけに遠くでセレナの耳に響いた気がした。



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