「雪国を舐めてるからそうなる」
「ローに言われたくないよ……」
にやにやしていたばちでも当たったのか、ぶるりと寒気がしてくしゃみをした私に呆れた声がかかって肩をすくめる。私なんかよりよっぽど薄着なローに注意されても説得力なんかなくて、だけど私がくしゃみしたのは事実で身を縮めて小声で呟くことしかできなかった。
「風邪をひきたくないならもう宿でおとなしくしてろ」
「……風邪ひいたら診てくれる?」
「おれがまだこの島にいて、お前が診察料を払えるならな」
ふん、と悪っぽく振る舞っているけれど、即答で拒否しないところに優しさが隠せていなくて思わず笑いそうになったのをマフラーに口元を埋めて隠した。またにやにやしたら今度こそ怒られるし、本当に風邪を引いてしまいそう。
「診察料ってなに払えばいいの? 私、お金あんまり持ってないよ」
「金以外でもおれが興味のあるものならなんでもいい」
「例えば?」
「コインとか、医学書とか、情報とか、まあ……なんでも」
診察料も海賊のお医者さんとしては破格すぎる良心的な値段の付け方でもうドライになんて役でもできないんだから全面的に優しいお医者さんとして売り出せばいいのに。
「ローが欲しそうなの、私持ってないなあ」
その日暮らしな私たちにはそんな破格なお値段でも払えそうになくて懐の寒さに肩をすくめて笑った。でも今度から珍しそうなコイン見つけたらローのために確保しておこうかな。
「そうか?」
「ん?」
どんなコインがいいんだろ、なんて考え込んでいたから一瞬反応が遅れた。
「お前しか持ってないものもあるけどな」
「? 私コイン持ってないよ?」
本当にすっからかんだよ、とコートのポケットをひっくり返して見せれば呆れてため息をつかれちゃって照れ笑う。
「コインじゃねェ。それをくれるなら、一生タダで診てやるしなんだって言うこと聞いてやる」
「? そんなに価値あるもの、私持ってないけどなあ……」
ポケットをしまいながら考えても何も思いつかなくて首を傾げた。
「でもローは優しいから私がほんとに風邪引いたら何も渡さなくても看病してくれるの知ってるよ」
チッ、と舌打ちしながらも相変わらず否定はしないローに頬が緩んだ。