ゾロの態度に一瞬返答に詰まってしまった。愛を伝える日だけじゃなく、友情でも、感謝でも、なんでもいい素敵な日に、ゾロにも渡せるかな、なんて一瞬はしゃいだ気持ちはすぐに萎んだ。だってゾロはチョコが好きじゃない。悩む私の背中を押すようにサンジくんがお酒の味が強いチョコの作り方を教えるよ、と優しく言ってくれて、それでも渋る私に、ナミさんもお酒好きでしょ?と柔らかく笑うから、つい頷いてしまった。ナミさん「も」だなんて、渡したい相手が他にいることがわかってる優しい言い訳を含んでくれたサンジくんにお礼を言ってもなんのこと?とはぐらかされたのを思い出して笑ってしまう。結局ナミちゃんは受け取ってくれなくて、可愛らしくラッピングされた箱が今も冷蔵庫にぽつんとしまわれている。ふたりに背中を押されたのに勇気の出せなかった私の胃袋の中に収まるその可哀想なチョコの行方を、当の本人に聞かれてしまって目が泳ぐ。なんで聞くの。チョコは好きじゃない、と否定されるのが怖くて隠したのに。私を否定されるわけじゃなくて、チョコを否定するだけなのはわかっているけど、今日のチョコを否定されるのだけは嫌だった。だから、ゾロとそんな会話、したくなかったのに。
「ちゃんとゾロにはお酒用意してるよ」
「嫌だ」
「……やだ、って、言われても、……」
嫌だを言われたくなかったからお酒を用意したのに、そのお酒を嫌って言われてしまったらもうどうしようもなくなってしまう。もごもごと口籠るしかできなくなった私を追い立てるように一歩近付いてきたゾロに、一歩後退る。
「……おれのチョコは」
ゾロが人を傷付けたりするわけがないのはわかってる。きっと甘いチョコを渡しても、顰めっ面をしながら全部食べてくれるのはわかってた。私が渡す勇気がないのを、ゾロのせいにしてただけ。サンジくんやナミちゃんは私なんかよりよっぽどそれを理解していて、だから背中を押してくれていたのに。
「…………ねェのか」
ゾロの言葉に、ぐ、と喉が詰まる。
「……チョコ、食べてくれるの?」
「食う」
「……嫌いなのに?」
「確かに好き好んでは食わねェ。でも、今日のは食いたい」
食べたい、と言ってもらえて心臓の音が痛いほど暴れ出す。なのに、まだ勇気が出せない。
「……すごく甘いチョコでも?」
お酒を使った甘さ控えめのチョコの作り方を教えてもらったくせに、口が勝手に意地悪を紡ぐ。うぐ、とゾロが呻く声が上から降ってきて思わず俯いていた顔を上げた。想像だけで甘ったるかったのか、顰めっ面になりながらも、食う、とはっきり私の目を見て言い放ったゾロに緊張が解けた。
「チョコ、ねェのか」
「……ある、よ。ゾロの、お酒の味がする、甘さ控えめのチョコ。……食べてくれる?」
大きく息を吸って勇気を出した瞬間、顰めっ面が一瞬で花開いてきゅうっと心臓が締め付けられた。