用意できたよ!と一目散にロビンちゃんの元へ舞い戻ったけれど、髪の毛がほんの少し跳ねていたみたいでそっと優しく撫でつけられて笑う。出だしはちょっと失敗しちゃったけど、大丈夫。まだ一日はこれからだから。
「小さなお祭りをしているんですって。のんびりするのは今度にして遊びに行く?」
私が準備している間に情報収集が終わっていたのか島の楽しそうな情報に目が輝いた私を見て、頷くより前にロビンちゃんに笑われてしまった。
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「ハートがいっぱいだね」
「そうね、とても華やかだわ」
綺麗ね、とお互い見合って微笑んで、それだけで今日のお出かけに満足してしまいそうになる。
「なんのお祭りなんだろ」
「お、あんたら、観光客かい?」
あまりにもあからさまにきょろきょろしすぎたのか、花屋さんが声をかけてきて肩が揺れる。へら、と笑いながら曖昧に笑ったけど、どうやら海賊とはバレていないようでとりあえずは安心した。観光客に何度も説明してきたのか、すらすらとお祭りの成り立ちを語るおじさんに興味を惹かれる。
「愛を伝える日か〜、素敵だね」
「愛の女神様が勇気と加護をくれるんだ。今の若者は女神様を信じていない奴も多いが、この時期だけは女神様を口実に浮かれてるよ。まあおれもそれに乗っかって商売してるから人のことは言えねェがな」
ワハハ、と豪快に笑いながら言われて、確かにいちゃいちゃしてる人が多いなと気付く。素敵ね、とロビンちゃんと微笑みあって、おじさんが並べていたハートのモチーフの花束に視線を移した。
「おじさん、私もひとつ買っていい?」
「お、いいぞ。話聞いてくれたお礼にちょっとまけてやるよ」
「やった、ありがと〜!」
ベリーを渡して、可愛いハートの花束を胸に抱えてロビンちゃんに向き直る。目が合うたびににっこり微笑んでくれたロビンちゃんが、にっこりせずに花束に視線を落として瞬く。目が合ったの、気付かなかったのかな。花束、綺麗だし、こっちに夢中になるのもわかる。ロビンちゃんお花大好きだし。そう納得して、一歩ロビンちゃんに近付こうとして、ロビンちゃんが一歩下がったから首を傾げた。
「……誰にあげるの?」
「?」
どこか引き攣った声で聞かれて首を傾げる。
「あなた、好きな男の子がいたの? 私、聞いてないわ」
? ロビンちゃんの言葉が聞いたことのない言語を聞いた時のようにすんなり頭で理解できなくて固まってしまう。聞いてないわ、ともう一度呟かれて、ようやく脳に届いた勘違いに心臓がきゅっと縮む音がした。変な勘違いをされている。
「す、好きな男の人なんていないよ!」
「じゃあどうしてそれを買ったの。ルフィ? ゾロ? サンジ? ……誰にそれをあげるの」
ロビンちゃんの止まらない言葉にそんな勘違いをされるとは思ってなくて焦る口がまともに動かない。なんでそんな勘違い。あちこちに通り過ぎる楽しげな人たちが、男女の組み合わせしかなくてはっとする。ふわっとしか話を聞いていない私と違って、観察力が高く賢いロビンちゃんは先にそれに気付いていたのかもしれない。だから、男の人にあげるために買ったと思われた。だけど私はそんなつもりひとかけらもなくて、慌てておじさんに尋ねる。
「おじさん! 女神様は男の人と女の人しか許してくれないの? 女の子同士はだめなの?」
「いいや? うちの女神様はなんだって許してくれるよ」
この島で駄目ならロビンちゃんをサニー号に連れ帰ってから花束を渡さなくちゃいけなかったけど、タイムロスをしなくて済んだことにほっとしてロビンちゃんに突撃する勢いで花束を差し出した。大きく見開いた目に花束が反射してうっかり見惚れてしまいそうになるけどそんなことしてる場合じゃない。なのに、ロビンちゃんみたいに頭が回るわけじゃないからまた口籠る。
「……ロビンちゃんにあげたかったの、……受け取ってくれる?」
「わたし……?」
ロビンちゃんの目に色とりどりの花だけじゃなくて光も混ざってぴかぴか綺麗なのに見惚れてしまって頷くのが遅れたけど、花束と同じくらい笑顔が花開いて心臓がおかしな音を立てた。