叱ろうと思ったのにルフィの期待に滲んだ表情がしょんぼりと翳ってしまったのが可哀想でつい勝手に口が甘やかす言葉を紡いでしまう。いつもこう、甘え上手なルフィに毅然とした態度を取れなくて財布の紐を緩めちゃう。甘やかしたって知られたら私も怒られるんだからね、とルフィに言えばキラキラ輝く目でこくこくと何度も頷くから、先走ったよだれが地面に落ちてさりげなく避けた。瞬間、ドン、と壁にぶつかってよろめく。ちょっと横に移動しただけで壁にぶつかるほど端っこにいたっけ?なんて視線を向けた瞬間、壁だと思った何かが動いて瞬く。悪いな、と上から声が降ってきて壁じゃなくて人だったんだ、と気付いて、私の方が悪いんですごめんなさい、と口をひらこうとした瞬間、絡んだ視線に固まる。
「うわっ、ケムリンだ!!」
「麦わらァ?!」
「おれたちこの島ではまだ悪いことしてねェぞ?!」
「まだってなんだ今からするつもりなのかそもそも海賊の時点でお前らには山ほど罪状が乗っかってるんだよ!」
唐突な海軍の登場に固まる私を置いてぽんぽんと応酬を広げる意気のあった二人に目を泳がせながらどう切り抜けるかを考える。どうしよう。ルフィと一緒にいた時で良かった、と思うべきか、ルフィがいるから見つかった、となじるべきか迷ってる間にぐりんと体にゴムが巻き付く。ひょえ、と悲鳴を上げる暇もなく宙に浮かんでぎゅっと目を閉じて成り行きに任せることしかできない。
「ケムリンのばかやろー!! おれアレ食いたかったのに!! せっかくいいって言ってくれたのによ!!」
「食い逃げでもするつもりだったのかてめェ!!」
「今日はちげェ!」
「今日はァ?! 今までどれだけの店で被害出してんだ麦わら!! 待て!!」
きゃあ、と目を瞑っていてもぐるんぐるんと回って飛んでるのがわかる浮遊感に、ルフィが私を手放すわけがないと分かっていても口からは勝手に悲鳴が飛び出ていく。くっそー、と食べ物を逃して悔しげなルフィにお願いだから穏便に撒いてほしい、と願うことしかできなかった。