「さあな」
「コイン?」
「…………違う」
あからさまに露悪的な態度が崩れて頬が緩む。ほら、取引なんてただの言い訳で、まともな対価も受け取らずに病気で苦しんでる人をただ助けただけの優しいローにマフラーの下で隠れて笑う。
「……売れば一千万ベリーにはなる」
「ふうん? 悪どいお医者さんだね」
「くそ、」
思ってねェだろ、ニヤニヤ笑うな、とぶつくさ言いながら帽子で顔を隠して俯いたって、覗く耳が真っ赤に染まっているから意味がない。寒くないならその耳の赤さはなあに、って聞きたいけどこれ以上意地悪をして嫌われたくないからそれ以上は突っ込まないで話を変えることにした。
「ねえねえ、どれくらいこの島にいるの?」
「…………お前は」
「ナミちゃんは二日で出航するって言ってた」
「……おれも似たようなもんだ」
「私、まだお昼ご飯食べてないんだけど、美味しいご飯屋さん知らない?」
「…………」
「サンジくんのごはん以外で」
難しいこと言うな、と笑われて、機嫌が治ったことに安心する。
「おれと一緒にいればうまいメシが出てくる」
「取引が終わった後もご褒美受け取ってるの? 悪徳お医者様?」
「これ以上揶揄うならお前の分は用意させない」
「うそうそ! ごめん! もう言わない! 一緒に食べたい!」
ふ、と笑われて、揶揄われ返されたのだとわかる。えへ、と笑ってローの横に並ぶ。
「でも私のこと通報されたりしないかなあ」
海賊だから通報されても仕方がないんだけど、せっかくお医者さんとしてのどかに島を散策できるローと一緒にいても大丈夫なのかな、と今更ながらに不安になって考える。
「大丈夫だろ」
「自分が大丈夫だからってそんな適当な」
「身内だっていうことにすればいい」
手配書には当然麦わらの一味だってことが書かれてるわけで、そんな嘘、通るわけがなくて首を傾げる。だってロー、こんなに優しいのに同盟は解除したって言うし、世の中だってきっとそう見てる。まあでも私たちも、ローたちも争い事が好きなわけでもないし大人しくしていればローの客人として目を瞑ってくれるのかな?なんて考えて先に歩き出したローの背中を追いかける。
「医者の妻なら通報されないだろ」
ぎし、と雪を変に踏み締めてしまって転びそうになって、ローの背中を見つめて固まる。耳、が、真っ赤。その色にさっきの言葉は幻聴や気のせいなんかじゃないことがわかって、体温が燃えるように急上昇した。