ずるずるとしゃがみこんで行く轟を見ていると段々耳が赤くなって行くことに気付いた。それに、くすくすと笑うと思いっきり腕を引かれ私は轟の前にしゃがみこむ形へとなった
真正面には轟の顔があって、先程のキスが鮮明に脳裏に浮かび上がる。テンプレかのように真っ赤になる顔を隠そうと抑えようとするがそれは轟に阻止され真っ直ぐ見つめ合う形になった
「付き合ってねぇって分かったんなら、俺は遠慮もしねぇ。
あの思いは二度としたく無いしな…、絶対に惚れさせっから覚悟しとけよ」
「へ、」
「顔赤いっての事は脈アリってことか?」
「〜〜〜っ!」
ニヤリと口角を上げるようにして笑った轟に恨みがましいような視線を送ったが頭をわしゃわしゃと撫でられる事で終わらされた
くそう、吹っ切れたかのような顔をして普段よりパーソナルスペースがかなり狭くなっているのが私でも分かった
ばっ、と立ち上がると腕を掴まれたままでさてどうするかと思案していたところ「送ってく」と轟に上目遣いでお願いされ車に乗せられた。しかも前回は後部座席だったのに現在は助手席だ。隣でちらりと視線を向けると嬉しそうな雰囲気が滲み出ている
やはりどこか強引というか、前より積極的になっている…?
いや、でも断れない私も悪いかなと今度は私が苦笑いする他なかった。轟には滅法弱いからなぁ…
「そういや家どこだ?」
「×△地区の△○マンションって言えば分かる?」
「何回か行ったことあるから分かる、あそこ結構有名じゃねぇか」
「轟のマンションよりは流石に劣るわ」
「、大差ねぇと思うが…」
「それは確実にないからね?」
なんて何の変哲もない普通の会話が続いており何時しか学生時代と同じ雰囲気のある空間ができあがって居たことに驚きつつも頬を緩ませた
寧人やお茶子達、緑谷達ともどこかが違い落ち着くというか安心するというか……と考えを巡らしていたらあっという間に家についていた。
「それじゃぁ今週末だな」
「?あ…、今月私の家だっけ?」
「おう。麗日から連絡あると思うが」
「じゃあ駅まで私車で迎えに行くね」
「じゃあ駅で合流してから俺が運転する」
「エッ、何故に!?」
「好きな女に運転させるわけにはいかねぇだろ」
「!?」
助手席から降り運転席側、轟側の窓ガラス越しで立ち話をしていたら突然の好きな女発言に目を丸くした。
「って言いたいんだがこっから駅まで距離近いしな、半分冗談だ」
「冗談に聞こえる冗談を言え…!」
「言っただろ?半分って」
「半分は本気ってことですかなるほど……ん?」
「好きな女っていうのは本当だしな」
「いつか轟背後から刺されるよ??大丈夫??」
「それに関しては大丈夫だ。普榧以外にこんな態度は取らねぇからな」
「だからこそ刺されるって自覚しようね……それじゃぁまたね」
「、またな。冬華」
「___……!」
ぐいっと腕を引かれたかと思うと頬にキスをされ固まった。お前は外国人ですか???なんて言うツッコミも出来ずに固まっている私を見てイタズラが成功したかのように笑う轟を尻目で見た私はカツカツとヒールを鳴らしながらその場を後にした
そしてマンションのエントランスに入り轟からの死角に入るとしゃがみこんで顔を覆うとその顔の熱さにびっくりした
「(もう…!なんなの…!)」
そしてマスコミのことが脳裏にチラついた私はスっと脳内が冷静になっていくのを感じ、颯爽とその場を後にした。
さて、寧人と相棒にはハードなスケジュールプレゼントしなきゃ(裏声)と脳内の私が呟く。実際、私が不在の間事務業は本来やるべき人物の元へと行く。重要な物は寧人に行くがその他は各自相棒のもとへ。
まぁ簡単にいうと本当はしなくてもいい役割を私がしている、というわけだ。だって相棒やヒーローには人を救うことだけを集中して欲しいから、事務所の経営や書類作業で変に気を使って欲しくない
要らない気遣いかもしれないけど、本当に人を救う職業は命懸けだから。
人命救助でも瓦礫に巻き込まれればヒーローとはいえ一般人と同じ人なのだ。只力のある人っていうだけで無傷で済む筈がないし、敵と戦闘をして場合によっては殉職してしまう人は少なくはない。
たった一瞬の躊躇や疲れ、迷い、色々な感情が動きの邪魔をして怪我をする。
そういうのを目の当たりにしているからこそヒーローにとって要らない苦労は取り除いてあげたい、そう思ったのだ。
でもこれとそれは違う。多少の嫌がらせはいいよね!ってことでお仕事お返ししようね。しょうがない、私、事務所に居ないんだから!!
部屋につくとすぐさま鞄から携帯を取り出しとある場所へ連絡を取り始めた。ワンコールで出た相手に苦笑いしつつ私は声を出した
「もしもしファントムシーフ事務所の普榧です。えぇ、はい。その節はありがとうございました。えぇ、それで先程の話ですが__」
*
2日目、昨日より騒ぎがますます大きくなって行きマスコミが堂々と恋愛報道としてくれた為主に女性ファンやお年寄り、地域の方々からはマスコミが周辺に散らばって鬱陶しい、等の苦情が殺到している。SNSではファントムシーフおめでとう!なんて言ってる方も出始めて、違うそうじゃない…と頭を抱えた。
正式に発表するのが今日の午後なのだ。会見の為の会場を借りるのに思った以上に手間取って困ったものだ。報道陣にはFAXで詳細を送った、後は時間を待つだけである
いやぁ、これが一般のヒーローなら本当にここまで騒がなかったんだろうけど…噂が一切立たなかったファントムシーフ事務所の、更にはその秘書と関係があるかもしれないんだから普通にやばいよね。そりゃスクープ大好きマスゴm…ゲフンゲフン報道陣にとっちゃ格好の餌食というわけだ。
それに寧人には顔ファンも女性ファンも多いわけだから…同担拒否の夢女子もいる訳で…苦情はその方々から来ている……
それに10以内のヒーローだし話題性は十分ある。噂のないヒーローから噂が出たとあらば結婚するのでは!?っと考えつくのは簡単だしねぇ…
「はーあ……めんどくさ」
「ブッフォ」
「この野郎はっ倒すぞ」
「荒れてるねぇ?」
「誰のせいだと…」
会場の控え室に居る私の横にはものまね野郎こと寧人が居り、今にもwの草が大量に生えそうな程嘲笑している
何がさっさと顔出ししないから…だよふざけんな……、TV出演やら経営の依頼、講師やらのオファーがしつこいの寧人は知ってるでしょ?と言いたい。いや、もう言ってるわ
こつこつと軽くヒールを鳴らしフラッシュが炊かれる会場へと足を踏み出した。そして表情筋を動かし営業スマイルを浮かべた
「皆様初めまして。ファントムシーフ事務所で秘書をしております普榧と申します。本日はこの記者会見へと起こし頂きありがとうございます___」
そこからつらつらと言葉を並べていき、まず私とファントムシーフは血縁関係であることを隣に並ばせて証明した。実際に並ぶと分かりやすいが髪色と顔の造りが多少似ているのだ。従兄弟なのにここまで似ているとは珍しいと思う
そこから記者への質問に懇切丁寧に答えて行き、中には今後メディアへの露出は?など聞いて来る方も居たがそこはまぁ……なんとか切り抜けたよ
げんなりとしながら控え室でぐだっと顔を伏せると思いっきりため息を零す
「あーー疲れた」
「そこまで疲れる?」
「当たり前でしょ?さすがに私も大勢の前では緊張するに決まってんじゃん」