「ブッ…!!!!!!」
あの宅飲みから3ヶ月経ち、今じゃ月1で私含めた4人のローテーションで宅飲みすることが恒例となっている今日この頃。
朝まだ出勤には時間に余裕があった為優雅にのんびりと珈琲を飲んでいた私は危うく珈琲をぶちまけそうになった。
だってTVにもろ私の後ろ姿が映し出されており、アナウンサーの口からは「某月刊誌から抜選しました、こちらの謎の美女が人気ヒーローファントムシーフ事務所を設立から支えていた、とのことです。女性ファンからは…」と延々と編集者の文章をスラスラと読み上げており何言ってんだこいつ…、と素で言ってしまった。顔と名前は伏せろと確かに言った。言ったけどもいつの間に後ろ姿撮ってやがった…!しかもご丁寧に編集した方は美人な、と付け足されている。寧人が届いたサンプル見せてくれなかったのもこのせいかよ…!
実は私有地の山を半壊にする程の喧嘩?サンプルの強奪戦をしたのだが負けてしまい見ることは適わなかったのだ…!その後片付けが大変だった。
急いで片付けを終わらせ1度"真似"したことのあるワープ系の個性を使いズルだがすぐ様寧人の元へと向かった。
だって事務所の前には報道陣が絶対2,3人は居る…、あること無いこと捏造されるんだろ、私は知ってるぞ
あるわけないのに熱愛報道とかなるんだろ…!!
「寧人!!!どういうことよ」
「あ、見たんだ」
「見たよ、見ましたとも。どういう事か説明してくれる?メディアでるの好きじゃないってあんた知ってるでしょ?」
「優秀な部下がいつまで経っても評価されないっていうのはいい加減嫌だったのさ。何か文句あるわけ?」
さらっと目を逸らしながら言われたことで、本心という事が分かってしまいぶちギレそうだった脳内が急速に冷えていく。そして今度は普段デレることのない寧人の言葉に羞恥がこみ上げて来る
「なっ……!!んなこと言われたらキレようにもキレられないじゃん…!でも話は別だから」
「うるさいなぁ、誤解されるのが嫌ならさっさとメディア出ればいいんじゃない?」
「面倒なことにしやがって…、分かった、メディアにはきちんと出る。だから余計なことは言わないでよ」
「契約成立」
「いったい誰の個性コピーしてきたのよあんたは…」
契約成立、と呟くと淡い光が私と寧人を包んだ。契約成立って言ったことから…達成しないとペナルティになったりするのだろうか…?こいつ、絶対前々から仕組んでやがったな…
眉間にシワが寄らぬよう揉み解すと相棒達に気にすることはない、と告げに行かなくては…。
多分突然のメディアが来るのに困惑してるハズ。あぁ、もう本当に面倒臭い
「あー、相棒達には事前に言っておいたから平気だよ。まさかここまでなるとは思わなかっただろうけど、でも皆そろそろ冬華自身が過小評価しすぎなのを気にしててこの騒ぎに喜んでる。そんな君は皆にキツく言えるのかなァ?」
見下したかのような笑みに口端が引き攣った、バレてただと…?アナウンサーが相棒達も、と告げていた為私を過大評価した犯人を突き止め誤解を解こうと思っていたのだ。無駄に悪知恵だけ回る寧人に盛大な舌打ちをプレゼントしてデスクに座り込んだ
あーーー、SMS関係がさっきからうるさいなぁーー、と現実逃避した。確かにうるさい。だってLIMEでは高校時代の友達から一斉に物間と付き合ってんの!?っていう理由の連絡が沢山来ているからだ。なぜそう、付き合ってるってなるのさ…意味わかんねぇ…。お茶子からはスタ爆かのように荒ぶるメッセージが届いている怖い
「めんどくさい…」
「マスコミを避けすぎるからだよ」
「目立つ気は無かったんだから当たり前でしょ。というかそもそもここまで大大的に騒ぐ必要ないのになんで…」
「まぁ、そういう噂の無かったファントムシーフに謎の女が秘書って怪しいし、編集者の雑誌に仲が良かったって書き込んでくれたようだし」
「完璧に噂を立たないようにしていた私に対しての嫌味ですかなるほど」
青筋を浮かべ殴らないように拳を握りしめる。危ない危ない寧人の大事なお顔に傷つけたら流石にダメよね…。
業務も終わりに差し掛かった頃、私はもう1度深く考えていた。だって冷静に考えて寧人がこんな理由も無くアホなことしないと思うんだよね。絶対さっきの言葉は本心だろうけど…他にもきっと何かがあるはずだ。だけどもそれが何か、なんてことは分からない
ぼんやりパソコンを見ながら考えていると突然頭を叩かれた
「ね、い、と?」
「ケータイうるさい」
「あー…ごめ、ん!?」
「なに、どうしたの」
「いや、え……?轟居るじゃん?」
「うん」
「なんかめっちゃ通知やばい、…え?なんで…??」
「あぁ、とりあえず出ないとぶちギレるんじゃないかな。性格から考えて」
「めちゃくちゃ嫌な予感しかしないんだけど」
「いいから出なよ」
渋々スマホをスライドさせ、通話に応じると耳に当てた。
「もしもし?どう」
「なぁ」
「はい」
「今下に居る」
「は、はい…?」
「話がある」
「え、うん…?分かった…??準備したら降りるから待って…て…?」
ブチッと切れた真っ暗な画面を見ながら私は固まる。そして寧人を見てもう1度スマホを見る
え??????かなり静かにキレられたんですが……。訳が分からず首を傾げたのも無理はない
だって私が轟を怒らせるようなことなんてしていないのだから
静かに、だがいつもより冷たく淡々と告げられた言葉に背筋に汗が流れた。轟のあそこまで不機嫌そうな声なんて初めてだし怒りの矛先が私だっていうのも正直怖い
でも、下に居るって事は…報道を聞きつけてやってきたわけだから、寧人の事務所の秘書してるということに関係あるのだろうか…?
混乱しつつも何があるか分からないし丁度帰宅時間なのでさっさと荷物を纏め寧人に挨拶を済ませた
同情の視線を含んだ薄ら笑いで見送られるが、んな事は気にしてられない。普通に怖いわ
「えっ、と…おまたせしました…」
「、本当にこの事務所に居たんだな。場所移すぞ」
下に居た轟は静かに佇んでいたが、どこか瞳からは焦燥感が溢れていたので本当に私になんの用があるんだ?とひたすら困惑する他無かった
場所を移すと言われぎりぎりと腕に力を込められ、その分焦っている事が分かり顔が歪むがとても指摘なんて出来なかった
喚くことは確かに簡単にすぐ出来るけど…何故かちゃんと轟の話を聞かないといけない。そんな気がして静かに引き摺られるような形でついて行く
そして連れられた場所は人通りが全くない薄暗い路地裏。辺りは月の光と僅かな街頭のみで、現在の轟の雰囲気といい……かなり戦いている
轟、そう声を発しようとした時に重なる影。目の前には轟の整った顔があり唇に軽く触れたのは紛うことなき轟の唇で
……接吻、口吸、口付け、とまぁ色々あるがキスをされていた。たったの数秒が私には長く感じられやけに轟の唇の感触がリアルに鮮明に脳内にインプットされてしまった、
冬場で寒いせいか若干乾燥しているが柔らかく……って違うし!!!
突然のことで訳が分からず顔が沸騰するように熱い。どうして轟がこの行動をした?考えろ、考えろ私
ぐるぐると脳内を駆け巡らせるが、なんで?という単純明快な単語しか出てこない自分に呆れ果てた
「な、なんで…?」
「好きだ」
「…は?いやいやいや、ごめんちょっと待って。ごめん、なんて言った…?好きだとか聞こえたんだけど」
「間違ってねぇよ。俺は、ずっと高校の時から冬華のことが好きだった。今だって好きだ」
真剣な顔でこちらを見下ろしてくるのに、嘘だ!なんて言えなくて余計混乱する
確かに好きな人は居るだろうなって思った、思ったけども…昔と違う人だと思ってた…、ずっと一途に私想ってくれたってこと…?私轟の気持ち気づいてなかったの…?嘘でしょ……
以前の飲み会で、私は鈍いと言われた意味もお茶子達からの意味深な意味も全て理解出来た。なるほど、これは私が悪いわ
「突然すまなかった、本当は言うつもりなんて無かったんだ。だけど、物間と付き合ってるって聞いて胸ン中ぐちゃぐちゃになったみてぇにどす黒い感情溢れ出てきて、」
「…んん?ちょっと待て今轟なんつった」
「は…?アイツと付き合ってんだろ」
「物間寧人と?」
「、おう…」
「待て待て待て、私は寧人と付き合ってない」
「は?あいつのこと呼び捨てしてんじゃねぇか。雑誌でも付き合っているように仲いいって」
嘘つくなとでも言いたげな視線を頂戴するが私は嘘なんて毛ほどもついてないし、むしろ全否定させて欲しいぐらいである。それにしても雑誌は誇張しすぎではないだろうか?ぜひともそれについて問い詰めたい
ま、まぁ…確かに轟に告られたという根本的な解決にはならないが…!
これだけは否定させて!?
「だって寧人は血繋がった従兄弟…」
またぴしっと固まってしまった轟に私は遠い目をするのであった