お誘い

今日は年に2回あるうちの事務所の完全オフ日。私と寧人だけではなく相棒達も休日で完全に事務所には誰も居ない訳である。私も例外ではなくのんびりと家で持ち帰ったパソコンで情報処理をしていた
紅茶を飲みながらのんびりと作業をするこの時間は嫌いではない。本当はしなくても良いんだけどすることが無かったから…つい、ね?
一時期忙しすぎて社畜のような生活をしていたのだがその名残で暇になるとつい、期限がかなり先の仕事でも終わらせようとしてしまうのだ。

パソコンを片付け仕事の依頼や、寧人の仕事に関するスケジュール管理。そして最近マスコミや世間が注目しているうちの相棒達へとTV出演の仕事依頼が来ていた為それらのチェックを行う。
大変だがもう何年もしているため慣れたものだ。最初こそはまだ手慣れず時間を食っていたが今じゃ作業スピードも上がっておりすぐにとは言わないが比較的早くに終わる
ほっと最後の仕事を終え少し冷めた紅茶を飲み込み、スマホを確認すると少し前にお茶子から着信が入っていた。普段は生存確認とでも言うようなメッセージのみが入るのだが…珍しい。かけ直すとコールが1度鳴り終わらないうちにお茶子が出た、あまりの速さにドン引きしつつ声を出した


「もしもし?」

「冬華ちゃーん!!お茶子です、いきなりごめんなぁ?」

「いーえ、お茶子が電話掛けてきたってことは用事があったんでしょ?」

「まぁ、用事というかお誘いというか…、久しぶりにデクくんと轟くんと私の休み被ったから今日轟くんの家…確か××辺りなんやけど、そこで宅飲みしたいなぁってお話しててな?…流石に女1人で男の子の家で宅飲み行くのもダメかな、と思って2人共と仲いい冬華ちゃんをお誘いしたんよ!えへへ、まぁそれは建前で私が4人で一緒に飲みたいっていうのもあるんだけどね……?あ、冬華ちゃんお仕事あったんなら断ってもいいんよ!?私としたことが、浮かれすぎて予定聞いてなかった…」

「ほらほら落ち着いて、何?3人とも明日休みなの?」

「そーなんよ!しかも私達の休みの理由が相棒達にゴリ推しされてって言う感じでね?」


3人とも忙しく働いているようでついに相棒達に矯正的に休ませられたのか、と妙に納得した。実は以前あまりにも休まない私に寧人が意識を強制的に刈り取られたのだ。首の後ろをガツンとね…?
素直じゃない寧人が久々にキレていたので大人しく休んだのは懐かしい記憶だ。まさか私の身を案じてくれるとは思わなかったのだ


「(3人は好きで休みを取らずにヒーロー活動に謹んでいただけだろーけど)」


それより久しぶりに休みならゆっくり休んだ方がいいのでは…?と思ったがあのお茶子のテンションからして私も行ってあげて久しぶりに甘やかしてあげるか、等と考えるほか無かった。
だって私はこのメンツと仲良かったけど成人してから集まってないのだから、楽しみにしてしまうのはしょうがないと思う。というか思わせろ


「行く、」

「ほんと!?」

「うん。私今日休みで明日午後出勤だから平気」

「なら、○×駅に8時集合です!!楽しみ〜!!ばいばーい!」

「あ、?うんばいばい」


マシンガントークで一方的に話されたような気がして相変わらずだなぁ、と笑が浮かぶ。それに、もしかしなくても深夜まで飲むつもりなお茶子に浮かべていた笑みを苦笑いへと変えることとなった
トップ1と2が休みなんだから相棒と3の爆豪は明日大忙しだろうことが頭に浮かび怒声が飛び交う事が安易に想像出来た


「準備しなくちゃ」


パタリとパソコンを閉じると伸びをするとぽきぽきと子気味良い音が首や腰から聞こえ、少し痛む腰を抑えながらのろのろと私室のクローゼットを開け放った



*



「お待たせ」

「わー!!冬華ちゃんこの前ぶりやね」


駅に行くと既にお茶子は待っており目立たないよう胸元より下まである髪の毛をお団子にし帽子を被り、マスクと伊達メガネと変装(もどき)をしていた。
…お茶子も人気ヒーローだし当たり前か


「お久しぶりです。お誘いありがとー、…これから高頻度で飲み会誘われそうな気がしてきたんだけど気のせい?」

「え、だめなん?」

「いや、お茶子とお話するの楽しいから別に良いけど。というか普通に忙しくなってから会わなかったから普通に会いたいしね」

「冬華ちゃ、……!!!!!!」

「わっ、ちょ…!?」


ガバッと抱きつかれキャッチすると嬉しそうにニコニコと笑うお茶子と目が合った。本当に嬉しそうに頬を緩ませながら「楽しみやなぁ」なんて言うからつい頭を帽子の上から撫でてしまった


「(可愛いやつめ)」


暫くすると移動することの無いお茶子に首を傾げるが、すぐにそんな疑問は解決した。目の前に1台の光沢のある黒塗りをされた車が止まったからである
お茶子はそれに戸惑うこと無く扉を開けた為運転手を伺うとそれは轟で、よくよく考えてみれば轟の家で宅飲みするんだから当たり前かなんてぼんやり思いながら挨拶を済ませた
一応送って貰うんだしそれ抜きでも礼はきちんとするべきだと思う、というかそれが普通では?

お茶子の話に私と轟が相槌を打ちそう時間もかからないうちに轟宅らしき高級高層マンションへと到着するのであった。というかここら一帯マンション街である。車や服装を見てもやっぱり稼ぎがいいことは一目瞭然で、高く聳え立ちちらりとガラス貼りから見える出入口やフロントは如何にも高セキュリティなのが伺える。というかここ、この県内でもセキュリティとして話題の所じゃない?まじかよ


「久しぶりに見たけど相変わらず大きい…」

「初見だけど稼ぎがわかる瞬間だよね」

「?、ありがとう…?」

「よく分かってない辺り轟だわぁ……」