「、乾杯」
「かんぱーい」
「乾杯!」
「乾杯」
4人あわせて持っているグラスを軽く持ち上げると一口ワインを口に含んだ。
ちなみに上から轟、お茶子、緑谷、私の順番である。
轟の家に着くと既に緑谷はついて居たようでスマホを確認しながら静かに用意して座っていた。その為手を洗わせて貰い席につくと雑談しながらすぐに飲みが始まった
改めて失礼にならないよう部屋を見渡すと黒と白、ブラウンで纏められた家具が目に入り見事に統一している。なんとも轟の雰囲気とあっており大人っぽい感じだ
高校時代の雄英高校の寮は落ち着かないって言って畳だったけどフローリングに慣れたようでそれを言うと一気に思い出に花を咲かせた
「なんというか轟の家初めて来たけど落ち着くね」
「んなこと初めて言われたぞ」
「あ〜でも分からんことないかも」
「確かに落ち着いてる感じはするもんね」
「でしょ?緑谷の家は1部オールマイトカラーが多そう。というか実際にグッズ部屋とかありそうだし」
「んん〜、黙秘します!」
「んふふ、オールマイトのグッズ結構あったよね」
「…あれ?お茶子行った事あるんだ?」
「アッ、いや、べつに!!」
「ふ〜〜ん」
「信じてないよねそれ!?というか意味深な目でこっち見ないで!?」
緑谷ににまにまとした視線を送るとお茶子と緑谷は揃って顔を赤くした。
なんだこいつらやっぱり付き合ってんの?今日の私達みたいに友達と集団で遊びに行ったのかと思えば2人きりっぽいしこれは…黒だな
ゆるりと口端をあげながら誤魔化しなさんなとでも言いたげな顔でお茶子をじーっと見るとあっさり白状してくれた
「…教えてくれれば良かったのに」
「…ごめんね?中々言う機会なくて今日ちゃんと言おうと思ったんだけど話の流れで言っちゃった…」
「まぁプロヒーローだし。いつどこでマスコミが嗅ぎつけるか分かんないんだから、そのぐらいガード固くてもいいんじゃない?」
むすっとして見せるもそれは表面上だけで高校時代からお茶子と緑谷は両片想いだって見てれば分かってたから、とりあえずは嬉しかった。嬉しいというより微笑ましいというか、まあ喜ばしいんだよな。
しかも付き合って5年突入したらしくそろそろ結婚すれば良いのに、なんて思ったけど2人には2人のペースがあるのだし口を出すのはやめた
「普榧は恋人いねぇのか?」
「私?居ないよ。そういう轟は居んの?」
「…いねぇ」
「でも轟って好きな人は居るっぽいよね」
「ンゲホッゲホッゴホッ」
「え…?なんでお茶子が噎せてんの、大丈夫?」
席順で隣にいるお茶子の背中を撫でてやると涙目でこちらをじとりと見てきた。いや、なんでそんな目で見られるんだ…。え?何?突然すぎてびっくりした…??直感なんだから仕方ないじゃない…
当の轟はぴしりと石化して、緑谷は苦笑いを含んだ複雑そうな笑みで微笑んでいる
「冬華ちゃん鈍いからそういうの分かんないかと思ってた…」
「私どちらかと言うと鋭いと思うんだけど…」
「普榧は自分に関してはすげぇ鈍いと俺でも思うぞ」
「あはは…、轟くんに同じく…」
「まぁ私のことなんていいんだよ。2人共おめでとう。6年目の記念日はちゃんと祝うんだから」
些か不満しかないが、なんか私のことを根掘り葉掘り聞かれそうな気配を察知した為緑谷とお茶子の話にすり替えると2人には照れたようにお礼を言われた。いつまで経っても初々しいようで何より…これからも末永く爆発してね?と決まり文句のように言うとお茶子から抱きつかれた
*
すっかり酔いの回ったお茶子が緑谷に甘えだして正直他所でやってくれって感じである。
しっかりと今日の事は後日お茶子をからかう材料として見ているが
昔ならば爆発しろ、と呪詛並に吐いていただろうけど今じゃ羨ましいという感情はあれど呪詛吐くほどではないかな
まぁ、普通にいらっとはするが可愛いものである
お茶子が緑谷にぴったりとくっつき緑谷はあちゃーっと苦笑いしつつも構ってあげていて、流石長く付き合っているだけはあると思う。なんというか…扱い?を覚えているような、パートナーの甘やかし方を熟知しているような夫婦感が漂っている。
大勢の集まりならこうはならなかったかもしれないけど、気のおける友達だからこうオープンなのかな?って考えると嬉しいものだ
だからこそ両片想いの焦れったい関係からここまで行ったのは微笑ましく映ってしまう
「ねぇ緑谷お茶子さっきから飲むペース速いけど大丈夫なの?」
「そうだよね…、多分もうそろそろ眠くなると思うから自然と止まると思う」
「んー冬華ちゃんデクくん私の話ちゃんと聞いとるん?」
「聞いてる聞いてる」
「ほら、もうそろそろ止めといた方が良いよ…」
「んぅ」
すりすりと緑谷の肩に額を押し付けるお茶子を見て明らかに眠そうであるのは一目瞭然
「あれだったら客室に寝かしつけて来てもいいぞ。暫くしたら起きてくんだろ」
「今日楽しみにしてたみたいだから最初飛ばしてたし……しょうがないっちゃしょうがないんだけどね…、じゃあお言葉に甘えてちょっと休ませて来るね、ありがとう」
「気にすんな」
軽くお茶子を姫抱きにした緑谷に連れられ多分玄関から入って一番手前の場所にあるであろう客室にお茶子を運んで行ったのを見送り、目を瞬いた。あの感じじゃ緑谷は当分お茶子に付き添っているだろう。
いやぁ、なんというか手馴れてる感が凄い
そしてお茶子のオープンに酔った姿が普通に女の子女の子して可愛いという
こう友達のラブラブっぷりを見れて満足したっていうのが本音だ
「お茶子ってお酒飲んで寝たらすぐ起きるんだ?」
「大抵は1,2時間したら水飲みに起き来るな」
「ならまだ暫く飲んでようかな」
「普榧も大分呑んでるけど大丈夫なのか?顔も赤けぇぞ」
「酔いはしてるけどまだ平気。ちゃんとペース掴んでるから」
ツマミを摘みながらグラスを傾けた。轟の顔もほんのり赤く色ずいており心なしか目尻が若干下がっている気がする
要するに色気が滲み出てる
轟も寧人と同じ酔うと色気が滲み出るタイプかぁ〜なんて思いながら良く物理的にお姉さま方に食われなかったな、と思うが気が置けるやつとしか酔うまで飲まないんじゃないかなぁって何となく思った
なんの根拠もない自信だけどね?
「普榧、」
「なぁに?」
「冬華って呼んでも、いいか?」
そう言えば、とでも言った感じに言われそんなことを気にしてたのか?と思うとえらく可愛いくてくすくす笑いながら了承の意を示す
「んー?突然だね、全然良いよ」
「冬華」
「…何よ」
「呼んだだけだ」
本当に嬉しそうに目元を緩めるものだから、胸がどこかきゅうっと甘く疼いた。それに困惑しつつもクラクラと脳髄を溶かされるような、そんな錯覚を覚える。
「(こんな体熱いのはきっと酔いが回ったせいなんだ、)」
それをずっと私は念じるように心の中で唱え続けた
そしてその状態で緑谷が来て一瞬慌てた私はきっと悪くないと思うのだ