澄み切った青空にふわふわと綿菓子のように浮かぶ空を背景に稚拙に折られた1羽の鶴を翳す。
今日も平和だなぁ、なんて鳥のさえずりを聞きながらぼんやりと寛ぐ時間はまさに至福の時である。何と言ったって私の座右の銘は、"平和に平穏に"であるからだ。
だがしかし、この黒曜中学は不良が集まる中学なので平穏とは程遠い場所なのだが私は裏技を使い平穏をゲットしていた。それは__姿を隠せるのだ!

何言ってんだこいつ、とか小説の見すぎだろ病院行けとでも周りから言われるのだろうが事実なのである。
幼い頃から周囲の人物から姿を隠すことが出来、そこに居るのに認知されないということが出来ていた。その精度は増すばかりで今じゃこの不思議な力を使って物までそこにあるように再現できる。方法は簡単で強く具体的にイメージをするだけ、なんと簡単なことだろうか

この能力を使い、荒れた校内で普通に通って居ても周り気付かれず平穏に過ごせているというわけである

携帯を取り出し親代わりでもある先生に帰ることを連絡した。
私の帰る家は孤児院で、手の中にあるお世辞にも綺麗だとは言えない折鶴は弟や妹達からのブレゼントだ。勿論血は繋がってはいない。だけども最年長である私のことを姉として慕ってくれている可愛い兄弟だ。そんじょそこらの兄弟より中がいいと言っても過言ではない。
今日は何を作ってプレゼントしてくれるのだろうか、それが帰宅してからの楽しみである。
本音を言うと学校なんかに行かず働きたいのだが義務教育期間が終了していない為仕方なく中学に通っている。高校は通信制に通ってバイトをしながら孤児院のお手伝いをしたいなぁなんて今のところ考えている。だって少しでもあの子達が快適に過ごせるよう手伝いたいんだもの。

それなりに人数が多いこの"美輪孤児院"はかなり広さがあり建物も大きい。敷地内に入り玄関を開けるとドタドタと走る足音が複数近付いて来た


「#なまえ#姉ちゃんおかえり!!」

「#なまえ#ねぇおかえり!見て見て今日皆でこれつくったの!!」


元気いっぱいな子達がきゃっきゃっと私の足元へと群がる、ああ今日も家族が可愛い


「あはは、皆ありがとね!そしてただいま。でもちょっと危ないから部屋行こっか」


そう声を掛けるとはーい!と元気いっぱいな声を響かせ手を引かれながら幸せだなぁなんて思った。

学校に行って、帰ったら弟や妹に癒されるの繰り返し。これが私の日常だったりする。



今日もいつも通り学校から帰って年下の子に癒されてほっと一息ついたところであった。
だけど皆からのプレゼントでいっぱいな自室に見覚えのない手紙がポツン、と机の上に置いてあったのだ。しかも私宛の手紙で"美輪 #なまえ#様"という文字が書かれているのだが、その文字が何となく私の字に似ているのである。似ている所の話ではないし、弟や妹で私宛の手紙にフルネームに様付けなんてことはしないはずなのだ。大人である先生だとしてま先生は私のことを#なまえ#と書くはず。不信感を募らせながら手紙を開けると何のプリントもされていない真っ白な1つのメッセージカードが入っており"深夜0時お前の兄弟が殺されたくなければ指定の場所へ来い"

私は眉間に皺を寄せる。どうやら私の大事な家族に危害を加えるらしい。
怖いけど行って真相を確かめるしかないか、と重たい腰を持ち上げ先生の部屋へと向かい他の扉より少し丈夫な造りをしているドアを開け放つ。


「せーんせ!」

「コラ、ノックしなさいって言ったろ」


椅子やソファには座らず綺麗に磨かれ光沢を放つ木製の机に腰掛け何かの資料を読んでおり肩まで伸びた髪を軽く結んでいる長身イケメンがこの美輪孤児院の所長?皆は先生と呼び本名は不明である。この先生1人で経営しているすごいハイスペックな人物だ。長年一緒に過ごしているが先生が出来ない事がある事を見たことがない、


「いやぁ、ちょっと先生に用事が」

「どした?悠と翔がまた喧嘩した?」

「いや喧嘩はしてたけどもう両成敗したから大丈夫__じゃなくって!」


少しばかりヤンチャな小学5年の弟達のことが頭を掠めるが頭をぶんぶんと振る。先生はニヤニヤとからかっているようでむっとむくれた


「なんだなんだ」

「夜の散歩してきます!!」

「あー……どのぐらい?」

「それがね、先生。わかんない」

「まぁ、#なまえ#の事だしちゃんと帰ってくるよな」

「あったり前! 私誰よりもこの孤児院大好きだもん」

「俺の次、な」

「分かんないよ?? とりあえず行ってきます」

「帰ってこなかったら地獄まで叱りに行くから覚えとけよ」

「……うん、多分大丈夫」

- 1 -
←前 次→