続 IFフラン
『星見の塔』の最上階。鐘が吊り下げられている場所からだと距離があると言えどクロスベル市内が一望出来る。先日まで居た場所、もう二度と帰れない場所となった街をフランはぼうっと階段に腰掛けながら眺めていた。ゴウゴウとうねりを上げる風がフランの束ねた髪を乱暴に靡かせて行く。
「こんな場所で一人黄昏て、どうしたんだい?」
「……カンパネルラ、君かね」
空気が実体を持つかのような曖昧さでフランの後ろの段上に出現した声は少年のモノでありながらやや高い声音。楽しげに笑う声に振り向く事もせず、クロスベルを臨みながらフランは彼の名を呼んだ。
カンパネルラはフランの顔を覗き込むような仕草をしながら問う。
「そんなに『彼』が大事?だったら直ぐにでもクロスベルに―――」
「カンパネルラ」
殺気すら篭ったのでは無いのかと思う程の、鋭い制止。フランは肩越しに振り返り、段上の彼を睨みながら続ける。
「……遊撃士のフラン・カストールは既に死んだ。もう居ない。此処にいるのは『八柱』のフラン・ランチェスター。……もう、関係のない事だ」
遊撃士としての『絶剣』も、クロスベルで特務支援課の者達と重ねた時間も、リベールでエステル達と交わした言葉も、帝国でリィン達と交わした信頼も―――ランディと重ねた言葉や時間だって終わりだ。カンパネルラから視線を外し、立ち上がったフランは虚空を掴み、引きずり出す。その動きに呼応するかのように長大な槍が出現した。
「『幻焔計画』の最終段階の調整がある。此処で失礼させて貰うぞ」
塔の端に足を掛けると、フランは迷いなくそこから飛び降りる。
残ったのはカンパネルラ、ただ一人で。
「……フフフ、強がっちゃって」
静かに笑みを零したカンパネルラはパチンと指を鳴らし、陽炎の様にその場から消え去った。